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[ 自動車・輸送機 ]
(2016/11/24 05:00)
三菱航空機(愛知県豊山町、森本浩通社長、0568・39・2100)の国産小型ジェット旅客機「MRJ」の開発が足踏みしている。22日に3号機が初飛行し、すでに計2機が米国に運ばれた。ただ、これまでの試験結果から機体の設計変更が必要になるとみられ、2018年半ばとする量産初号機の納入延期を検討している。米国で本格化する飛行試験にも時間的余裕は少なくなり、早急な対処が必要となっている。(名古屋・戸村智幸)
「スケジュールと費用を再精査している」―。三菱重工業が10月末に開いた4―9月期連結決算説明会での宮永俊一社長の発言は、5度目となる納入延期を予感させた。
理由は型式証明の取得作業の中で出た各種変更。それより前の9月末には三菱航空機の幹部が、納入先のANAホールディングス(HD)に機体の生産段階で技術的な問題が発生し、延期の恐れがあると伝えた。
設計変更に加え、米国での飛行試験の進捗(しんちょく)も懸念される。試験機5機のうち、1―4号機を年内に米国に運ぶ計画だが、9月末に1号機、11月に4号機を運び終えたのにとどまっている。型式証明取得には、約2500時間の飛行試験が必要とされる。日本での試験時間は1割ほどで、大半は気象条件の良いワシントン州のグラント郡国際空港で実施する。MRJは18年前半に型式証明を取得する計画だが、これは飛行試験が順調に進むことが前提にある。
2、3号機の米国行きが遅れれば、18年前半までの試験時間は減る。試験でトラブルが起き、機体の改修が必要になれば、さらに時間的余裕は失われる。
こうした問題に対処するため、三菱重工は月内にも、宮永社長直轄の組織「MRJ事業推進委員会」を発足させる。全社の経営資源を活用し、緊急時に迅速に意思決定できるようにする狙いがある。延期の必要性や設計変更などの諸問題について、宮永社長直轄で判断するとの意思表示ともいえる。
半世紀ぶりの国産旅客機開発にトラブルや遅れは付きもの。とはいえ、5度目の延期となれば、信頼低下が懸念される。三菱航空機には延期はするものの、安全性の高い機体を完成させるという決意を今まで以上に、顧客や市場にアピールすることが求められる。
(2016/11/24 05:00)