[ 機械 ]

【別刷特集】IoT-工作機械業界のIoTへの取り組み

(2016/11/25 15:00)

 前回のJIMTOFから機械業界の中で大きな変化が出ている。その一つがIoT(モノのインターネット)やインダストリー4・0を活用した生産システムで、加工精度やスピード競争ではなく、加工方式そのものを変える可能性がある。ユーザーにとっては、生産効率改善などのメリットが出てこよう。メーカー、システムエンジニア、商社など、機械業界の中での主導権争いはまだ始まったばかりだ。

◇東海東京調査センター 企業調査部 大平 光行

システム・加工方式を革新-主導権争い始まる

 JIMTOF2016のテーマは「ここから未来が動き出す。」。過去のテーマには「モノづくり」や「匠の技」といった機械加工そのものを表現しているものが多かった。出展企業各社はミクロン単位の精度やきさげ技術など、その技術力をユーザーにアピールしてきた。

 しかし今回のテーマは、機械加工技術のアピールよりも、システムや加工方式など新たな形を模索している印象が強い。新たな形の一つとして、IoTやインダストリー4・0が挙げられる。今回のJIMTOFに出展する企業でも、IoTやインダストリー4・0をアピールする企業は多そうだ。

 第4次産業革命とも言われるインダストリー4・0は、モノのインターネットと呼ばれるIoTと連携して、自ら考える設備・工場を実現し、ユーザーの生産最適化やコスト最小化を目指すもの。生産ライン上にある全ての機械が同一の管理システム上で稼働し、各機械の稼働状況のモニタリングを行う。

 モニタリングを行うことで、各機械それぞれの稼働時間の最適化が図られ、投入原材料の回転時間の短縮などにつながる。株式市場・投資家からは企業に対してキャッシュフロー創出のニーズが強いが、このシステムの導入は投資家ニーズに合致しよう。

 また機械故障の予兆検知・対策、運転管理などが可能になり、生産コストの低減につながる。将来的には工場の無人化もできそうだ。

 技術的なハードルは決して高くないと考える。現在でも、ユーザーのもとで稼働している機械のモニタリングや遠隔操作は広がっており、驚くようなものではない。工作機械業界ではないが、建設機械やプラント業界などでは、モニタリングや遠隔操作は当然の技術として扱われている。

 機械動作や故障を感知するセンサーや制御機器などの技術進化はとても早い。そのデータを解析し、次の作業に生かすAI(人工知能)技術も高度化している。

しかし市場拡大への課題は多い。例えば、工作機械と管理システムは誰が結ぶのか、加工データの管理(情報漏えい)は大丈夫か、などである。大手自動車メーカーなどは社内に自社工場のシステムを構築する部門を持っているが、中小企業が自前でそろえるのは難しい。

メーカー・商社、業界地図に変化も

 数値制御(NC)装置トップで工場自動化(FA)を得意とするファナックは、米シスコシステムズなどと共同で生産ラインを一元管理できるシステムを開発した。ファナックはシステム利用料を収益源とする。ただユーザーの生産ラインを構築するためには、このシステムにいくつかの機械を結ばなければならない。

 ファナックもしくは大手メーカーがその窓口となり、多くの機械メーカーはその下請け的な存在になるかもしれない。オークマやDMG森精機、ヤマザキマザックなどの大手工作機械メーカーは、独自にシステムを構築し、自社製の機械だけでなく、他社製の機械ともつなぐことでユーザーの囲い込みを狙う。

 機械メーカーがユーザーの生産ラインを構築できるようになると、これまで機械メーカーから機械を購入して、ユーザーの生産ラインを構築してきた機械商社としてはビジネスチャンスが減少するリスクがある。その一方で、機械商社としては社内でIoTを活用したシステム構築をできる技術ができれば、大きなビジネスチャンスになりそうだ。今後の機械商社の取り組みにも注目したい。

 このIoTやインダストリー4・0は、機械メーカーや商社にとって、自社が業界内で主導権を握れるか、または単なる下請け業者になるか、業界内の優勝劣敗がはっきりするきっかけになるだろう。

【11/16付本紙別刷「JIMTOF2016特集」より】

(2016/11/25 15:00)

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