[ ロボット ]
(2016/12/2 05:00)
■独自の会話エンジンによるスムーズな会話情報から最適なマーケティングを考案■リクルート住まいカンパニー&リクルートテクノロジーズ
住居購入希望者に個別無料の相談サービスをする「スーモカウンター」の店頭に人型コミュニケーションロボット「Pepper(ペッパー)」が導入され、相談に訪れる顧客数が増加した。そのポイントとなったのが独自に開発した会話エンジンだった。
リクルート住まいカンパニーとリクルートテクノロジーズは、2015 年12月よりスーモカウンターの店頭にソフトバンクの人型コミュニケーションロボット「Pepper(ペッパー)」を導入した。現在、全国14の店舗で接客担当として稼働している。
スーモカウンターとは、新築マンションの購入および注文住宅の建築について個別に無料でアドバイスを提供する店舗であり、そこにPepperを導入したきっかけは、リクルートテクノロジーズが2014年に独自開発した会話エンジン「TAISHI( タイシ)」を活用することだった。
「それまでにTAISHIの原型となるシステムを会話ボットとしてパソコンやスマートフォンで提供してきましたが、これをロボットに搭載すればフェイス・トゥ・フェイスでリアルにおもしろい活用ができるのではないかと考えました」(ITソリューション統括部アドバンスドテクノロジーラボ、塩澤繁さん)
その発案に興味を示したのがグループ企業のリクルート住まいカンパニーだった。スーモカウンターの店頭に立ち止まる人をもっと増やしたいと考えた同社は、主な顧客であるファミリー層を呼び込むうえでPepperはそうした客層に親和性が高いと判断した。
そこで2015年4月、スーモカウンター・アリオ橋本店に1台のPepperを導入し、顧客が立ち止まるか、安定稼働するか、顧客と長文で会話ができるのかなどさまざまな観点から導入の可能性を調べた。その結果、店頭に人が立ち止まる数が数倍に向上し、さらに入店してカウンターサービスを利用する人の実数も増加するなどPepperを導入することの効果が確認できた。さらに、同年9月には八重洲地下街店と南砂町SUNAMO店、アルカキット錦糸町店の3店舗のスーモカウンターでも同様の効果を検証できたことから、同年12月に本格導入を決めた。
Pepper に4 つの独自機能を搭載した
「店頭で足を止めるお客さまは、住宅やマンションを購入したいと思われてはいるのですが、まだ希望のエリアは決まっていない、でも、住宅やマンションの地域ごとの坪単価は知りたいというご要望が多いです」(塩澤さん)
住居を購入したいと思っているがまだ具体性はなく、一方、どこでどんなタイプの住居を購入すればどのくらいの費用がかかるのかといった費用感は気になる。店頭に足を止める多くの顧客がそんなイメージだという。そうした顧客に対して、希望に基づいて物件や地域、建築会社を紹介するがスーモカウンターのサービスであり、店頭に足を止める顧客をカンターまで誘導する役目をPepperに担わせようとした。
リクルートテクノロジーズは、スーモカウンターでPepperを活用するため、「サービス紹介」「会話」「ゲーム」「サイト連携」の4つのオリジナル機能を搭載した。サービス紹介は、音声とタブレットの表示で上述のようなスーモカウンターのサービス内容を紹介する。
会話は、クラウド上の独自の会話エンジン・TAISHIに実装される自然言語処理および基本会話(数万会話)と専門(住宅)会話辞書データベースで対応する。Pepperに話しかければ、クラウド上のTAISHIが会話を分析し、Pepperが最適な回答(会話)を音声で発する。長文の問合せでもその内容を理解でき、的確に応答できる。また、技術的には機械学習により基本会話を順次増やせる。
ゲームは、ファミリー層の顧客が連れてくる子供を楽しませるものであり、4種類のゲームコンテンツを用意している。サイト連携は、時間のない顧客をWeb上のスーモカウンターの詳細説明ページへ誘導したり、カウンターでの相談予約ページにリンクさせる。
会話ログからわかったこととは
これら4つの独自機能を搭載したPepperを各店舗に配置してTAISHIを介して会話させ、PepperとTAISHIそれぞれの会話ログをひも付けることで、どんな属性の顧客がどんな会話をしているのかというデータが取得できている。その中には既述のような、マンションか注文住宅かなどの居住形態や人気のエリアなどのようなマーケティングに資するデータも含まれている。これらのデータを活用すれば、顧客の属性に合致したマーケティングや新しいサービスの提供などにつなげられるという。
顧客とのインターフェイスとしてPepperを有効活用するうえで大きなポイントとなったのが会話機能だった。特に「人間との会話に近づけ、ロボットであることを意識させない、ストレスを感じさせない会話」というリクルートテクノロジーズの開発コンセプトが効果的だった。また、Pepper以前にSNSで提供してきた会話型サービスで積んだノウハウも大きい。Pepperに話しかけるとおもしろい回答が返ってきて自由な会話が楽しめるという同社の狙いが顧客から多くの会話データを収集できることにつながった。
各店舗の特性に合ったマーケティングができる
Pepperの導入でサービス利用者を増やすという効果のほかにも大きなメリットがあった。「それはPepper で交通量調査をできるようになったことです」(塩澤さん)
Pepperを使えば店頭を通過する人の年齢層、性別、感情(表情から分析)といったデータを容易に収集できる。従来はコストなどの制約から交通量調査(店頭を通過する人の調査)や客層の把握ができなかった。しかし、Pepperの標準機能である人の認識機能を活用することで容易に交通量調査ができるようになった。それにより店舗ごとに店頭を通過する人の属性が異なることが明確になり、その結果、それぞれの店舗に合ったマーケティング施策を実施できるようになった。
さらに、その店頭を通過する客を店内まで誘導するきっかけにPepperは大いに有用だった。これまでは、店頭を通過する人や立ち止まる人に店員が話しかけると、営業されるという警戒心を相手に与えてしまうというリスクが伴い、なかなか店員も声をかけられなかった。しかし、Pepperを導入したことでPepperを見て足を止める客も増え、それらの人に話しかけるきっかけができたという。
Pepperには、店頭を通る人に警戒心を与えず、同時に興味を引かせるという特性があり、それはスーモカウンターの店員をサポートする大きな機能ともいえる。Pepperはかなり優秀な営業マンのようだ。
(2016/12/2 05:00)