[ ロボット ]

【電子版】TheROBOT特集(6)IoT時代のサービスロボットに期待する本当の役割

(2016/12/30 05:00)

■独自シナリオによるカスタマイズ化で他社と差別化できる対話型ロボット■NTTドコモ/エスビー食品(下)

  • OHaNASの音声と文字( スマホ、タブレット)で約80種類のスパイスを紹介する

ASPを活用すれば導入費用・時間を軽減できる

自然対話プラットフォームの特徴として、音声対話型システムを開発するための機能を自由に組み合わせられること、および導入企業ごとのシナリオを追加できることによるカスタマイズ性の大幅な向上がある。

また、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー=ソフトウェアをインターネット経由で提供する事業者)を活用してシステムを構築できるため、導入のための費用や時間を軽減できる。OHaNASによるおしゃべりロボット for Bizのサービスを導入する場合、初期設定(OHaNASの購入費用含む)が50万円、月額使用料が3万5000円であり、対話用シナリオは50シナリオを設定できる。シナリオは月間5 シナリオまで更新できる。

OHaNASを活用した店舗サービス

おしゃべりロボット for Bizのサービスを活用するユーザーに大手食品メーカーのエスビー食品がある。同社は2015年11月のいなげや所沢西武園店を筆頭に現在まで全国20カ所のスーパーマーケットやショッピングモールにOHaNASを活用した香辛料売場での販売促進を展開している。そのきっかけについて同社営業グループ家庭用営業部営業統括ユニットの吉弘浩昭マネージャーは説明する。

「まず、食品売場の店員がお客さまへ説明する食材や製品でもっとも困るのがワイン、チーズそしてスパイスといわれています。特にスパイスはお客さま自身もどう料理に役立てればいいのかがわからない調味料でもあるのです」

同社によれば、ネット調査でも70%以上の消費者がスパイスを使うと料理がおいしくなると思っているが、一方でどんな料理にどんなスパイスを使えばいいのかわからず悩んでいるという。

それに対して同社では、これまで小売店の香辛料製品の棚にポップやガイドを設置してスパイスを使った料理メニューを提案してきた。さらに、同社のWebサイトやセミナー、イベントを通じてスパイスの情報や魅力を発信している。そうしたスパイスの啓蒙活動に加え、「今後、人手不足によりスーパーマーケットでは、来店客との接点を持つ機会がさらに減少すると予測され、店員に代わって来店客の悩みを解決するロボットが必要になる」(吉弘マネージャー)と考えOHaNASによる販売促進を決めた。

また、OHaNASを選択した理由についても「小売店の棚はスペースが限られているので、動くロボットでは困る」(吉弘マネージャー)ことなどから、さまざまなロボットを検討した結果、売場の棚にコンパクトに設置できるOHaNASに決まったという。

独自シナリオでスパイスをわかりやすく紹介する

現在、同社ではOHaNASに搭載する独自シナリオとしてローレルやシナモンなど約80 種類の説明データを登録している。OHaNASに「ローレルってなに?」と問いかければ、「ローレルといえば、煮込み料理に入れるといいよ!」と音声と文字(スマホ、タブレット)で料理での使い方のワンポイントを答え、さらに「洋風煮込みに欠かせない清涼感がある芳香、シチュー、ロールキャベツ、カレー、ミートソースがおすすめ!」などとスパイスの効果と具体的な料理を紹介してくれる。

また、自然対話プラットフォームの外部コンテンツ連携機能を活用し、自社のWeb サイト「みんなのiレシピ」(スパイスとハーブを使った料理の紹介サイト)や外部サイトの「クックパッド」など、より具体的で詳しい料理レシピにリンクさせてスパイスへの興味・関心をさらに引くような仕掛けもしている。

  • 自然対話プラットフォームとして新たに開発した4つの機能

ユーザビリティーの向上へと改良を重ねる

そうした独自シナリオやWebサイトへのリンクを搭載したOHaNASを昨秋に展開して以降、店舗で実際に効果を上げるための改良が重ねられている。

「当社のスパイスを購入されるメインの消費者である主婦の方々に働きけかけるためOHaNASを店舗に配置しましたが、店内アナウンスなど当初は予期しなかったさまざまな影響もあり、いまも改良を重ねながら最適化を進めています」

OHaNASを店舗へ導入した当初、話しかけるのはほとんど子供だった。子供は無邪気になんのためらいもなくロボットに接するが、その子供を連れた主婦は人前でロボットに話しかけることに抵抗を感じたようだ。また、店頭のOHaNASをどう使えばいいのかもわかりにくかったようだ。そこでポップなどを活用してOHaNASの使い方をわかりやすく伝えるなどの改善を図った。

また、スムーズな会話に向けた調整にも取り組んでいる。「たとえば、シナモンとシナモノ(品物)を聞き間違えてスパイスとは関係のない反応をしてしまったことがありました」(吉弘マネージャー)

店舗での平均的な買い物時間は27分とされ、その短い時間でOHaNASが来店客の主婦とコミュニケーションするためには、スムーズな会話が不可欠であり、そうでなければ主婦に受け入れられなくなってしまう。そのためOHaNASの会話記録を参考にしながらスムーズに会話できるような調整も続けている。

新しい付加価値の提供

会話の記録を大量に収集して分析していけば、スパイスに対する消費者の嗜好や傾向もわかるようになる。それにより将来的には、メニューに悩む主婦をサポートするような新しいサービス(価値)の提供も可能になる。現在、店舗の食材を見ながらメニューを決める来店客の割合が60 〜70%とされる。であるならば、店舗でお薦めの食材とスパイスを組み合わせた料理メニューを提案するサービスも「新しい付加価値」の提供として有望なようだ。

前ページ「8つの機能のAIで流暢に会話する」

(2016/12/30 05:00)

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