[ ロボット ]
(2017/1/20 05:00)
大手エレクトロニクスメーカーが次々とリリースするサービスロボット&新ビジネス
NECプラットフォームズ/富士通
IoT の時代を見据えて大手エレクトロニクスメーカーが次々とサービスロボットおよび関連サービスをリリースしている。昨年5月に富士通がコミュニケーションロボット「ロボピン」を発表し、7月にはNECプラットフォームズが、ロボットをユーザーインターフェイスにした「オープンプラットフォームPaPeRo i(パペロアイ)」で新しいビジネスを始めた。
ロボットをUI にした高速ルータ
NEC プラットフォームズは2016年6月、IoT 時代の高速ネットワークゲートウェイ(プログラマブルルータ)として、ロボットをユーザーインターフェイス(UI)とした「オープンプラットフォームPaPeRo i(パペロアイ)」を開発した。
PaPeRo iは、高さ約30センチメートル、幅約20センチメートル、奥行約23センチメートル、重さ約2 キログラムのロボットが座布団に載ったデザインとなっている。実はこの座布団の中に基本機能であるエッジルーター(各種センサー、ポートなど)が収められている。ロボット本体にはマイク(額)、カメラ(目)、LED ランプ(口、胸など5カ所)が標準装備されている。
PaPeRo iは、ユーザーが自由に機能を拡張できるのが特徴だ。その胴体の内部は拡張スペースになっており、背中側から機能拡張のためのボードを挿入できる。市販のボードコンピュータを利用すれば、外部センサーや周辺機器を接続したり、アプリ開発の自由度を高める実装も可能になる。
“人のようで人でない”という存在の価値
同社が高速ネットワークゲートウェイを開発するうえでユーザーインターフェイスにロボットを用いたのは、従来のようにプログラマブルルータと各種センサーデバイス(カメラ、温度計など)、アプリケーション(監視用アプリ)を組み合わせた機器だけでは、さまざまなシーンの人の行動や振る舞いを自然に観察するには適さないと考えたからだ。
そしてより自然に人を観察するには、人のようで人でないロボットという存在が人の自然な行動や感情を引き出せると考えた。たとえばカメラで観察するよりも、ロボットに内蔵したカメラを利用すれば、「監視されている」という人の意識が緩和され、見られていることを意識しない日常的な振る舞いを観察でき、実態に近い情報収集が可能になるからだ。IoT におけるユーザーインターフェイスとしてのロボットは、「人のようで人でないという存在が重要な価値」(渡辺裕之取締役執行役員常務)になるのだ。
新しいビジネスマッチングスペースを開設
このPaPeRo iを用いて同社は2016年7月に「コラボマーケットプレイス」というビジネスマッチングスペースを開設した。PaPeRo iはコラボマーケットプレイスを通じてレンタルされている。
コラボマーケットプレイスはPaPeRo iを活用するためのアプリケーションを提供する「アプリケーションパートナー」、ボードコンピュータなどのハードウェアを提供する「ハードウェアパートナー」、PaPeRo iを含むソリューションサービスをエンドユーザーに提供する「ビジネスパートナー」の3 者から構成される。PaPeRo iを業務で活用してみたいと考える企業は、コラボマーケットプレイスに参加するビジネスパートナーにコンタクトすることでPaPeRo iを導入できる。
現在、コラボマーケットプレイスには、ビジネスパートナーが約60 社、アプリケーションパートナーが約40 社参加しているが、NEC プラットフォームズは、今後パートナー同士の連携が広がり、相互作用によってIoT ビジネスが加速することに期待を寄せている。
「人と人」「人とシステム」との関係を良好にするロボット
富士通は、クラウドの人工知能(AI)につながったロボットが人とICTを自然につなぎ、1 人ひとりに合ったサービスを提案するという自らのロボットの将来ビジョンに基づき、人と協調するメディエータロボット「ロボピン」を開発し、2016年5月の「富士通フォーラム2016」で発表した。
メディエータとは「仲裁人」を意味するが、同社は、人と人、人とシステムの間に良い関係を構築することを目的にメディエータロボットと位置付けた。
スムーズなコミュニケーション
IoT の端末にロボットを用いるには人との接点が重要になる。同社では、人と人とのコミュニケーションの間に入り、さらに業務システムとうまく連携できるロボットの開発を目指した。
ロボピンは、全長30センチメートルとコンパクトであり、単眼(カメラ)で6関節とシンプルな構造になっている。頭、両腕、足元などの6 関節(軸)をサーボモーターで動作させて身振り、手振りをさせ、顔や指先に実装したフルカラーLED を発色させることで感情を表現する。ロボピンはクラウドのAIにつながるが、画像認識、音声認識・発話合成の機能はロボピン本体にも搭載することで、人との会話などによるコミュニケーションをスムーズにしている。
ユーザーフレンドリーなロボットにする
ロボピンのスタイルは、電子地図に用いられるピンの形をモチーフにデザインされた。単眼の顔は「ゲゲゲの鬼太郎」の目玉おやじを連想させるが、ユーザーフレンドリーなキャラクターになるように会話や動作には工夫を凝らされている。
「これまでのロボットの研究・開発でも、うれしい、悲しい、さびしいなどの感情をノンバーバル(非言語)で身振り・手振りにより表現させてきました」(富士通研究所応用研究センターロボティクス推進室・清水雅芳室長)
富士通研究所ではこれまでにもさまざまなコミュニケーションロボットを開発し、その中で動作により感情を表現するノウハウを蓄積してきた。その感情の表現が、会話のみならず人に対してフレンドリーな感覚をもたらす大きな要因になる。
今後もロボピンの開発は続き、感情を伴うユーザーインターフェイスの向上が図られる。
「ロボットが人とコミュニケーショする際のカベを下げられるような自然なインターフェイスを目指していきます」(応用研究センターロボティクス推進室 神田真司イノベーションリーダー)
昨年5 月の富士通フォーラム2016 では、入り口で配布したビーコン(無線通信デバイス)をもとに来場者を特定し、さらにクラウドにあらかじめ登録されている情報やビーコンで取得した行動履歴をもとに、1 人ひとりに合ったお薦め情報をロボピンが案内したように、人とロボットが協調する新しいサービスのあり方を提案した。
(2017/1/20 05:00)