[ オピニオン ]
(2017/1/24 05:00)
酪農王国として知られる北海道十勝地方。十勝平野の北西部、大雪山系の南麓に広がる鹿追町に24日、環境省の委託事業で畜ふん由来のバイオガスから水素を製造して供給する実証施設「しかおい水素ファーム」がオープンする。
人口5500人強の町内で飼育する牛は、およそ2万頭。大量に発生する牛ふんは肥料にするが、そのまま農地や牧草地に散布すると風向きによっては市街地まで悪臭が漂い、夏場の観光誘客の障害にもなっていたという。
問題解決に向け2007年、同町は家畜ふん尿をメタン発酵させるバイオガス施設を設置。バイオガスを発電に利用し、副産物で悪臭がほとんどしない発酵消化液を液体肥料として地元農家へ供給してきた。
今回の委託事業はこれをもう一歩進め、バイオガスを精製して水素を“電気の素”として蓄える設備を導入。燃料電池車や燃料電池フォークリフト、さらに高圧ガスボンベを連結した集合容器(カードル)に詰めて運び、地域の定置型燃料電池で使えるようにした。
畜ふん由来の水素製造・貯蔵・輸送・利用までを一貫して実証するのは国内初。化石燃料を使わない水素サプライチェーンを探る。厳しい環境に置かれる酪農業の将来につなげたい。
(2017/1/24 05:00)