[ オピニオン ]
(2017/5/31 05:00)
「今のソニーは何の会社ですか」。経営方針説明会で記者から質問されたソニーの平井一夫社長は「一言でいうと“感動会社”。映画や金融、製品で(顧客に)感動をお届けする」と答えた。
テレビ事業の不振に苦しみ続けたソニー。業績低迷が長引いても、世間を驚かす商品を生み出す「ソニーらしさ」が求められてきた。ようやく期待に応えられるまでに復活した手応えが、平井社長のコメントにみなぎった。
50歳の現役プロサッカー選手、三浦知良さんは著書『とまらない』(新潮社)で、前評判を裏切って低迷するチームの選手が抱く「こんな実力じゃない」という発想が「落とし穴」と指摘する。周囲が「もっとできる」と言うほど、選手に甘えが生まれて急浮上が難しくなる。
三浦さんは現実を直視し、実力を高めることに目を向けるべきだと助言する。日本代表歴代2位のゴール数を誇る三浦さんも、現在の自分に向き合っているから現役を続けられる。
企業も成功体験に縛られると、市場ニーズの変化に乗り遅れてしまう。競争環境が変わったのに、周囲も以前と同じ業績を期待してしまうことがある。過去の「ソニーらしさ」を忘れ、感動的な商品の登場を待ちたいと思う。
(2017/5/31 05:00)