[ 機械 ]

第59回十大新製品賞/本賞−アマダホールディングス・アマダマシンツール ハイパーソー

(2017/2/1 05:00)

  • 「HPSAW−310」を前に田所雅彦アマダマシンツール社長(右)と話す辻本氏(左)と瀬戸氏

【ハイパーソー「HPSAW−310」】

切磋琢磨(せっさたくま)―。アマダマシンツール(神奈川県伊勢原市)の新型バンドソーの開発風景は、互いを高め合うこの言葉で形容し尽くせる。帯状の刃を高速回転し、鋼材を切断するバンドソー。同社のように1社で機械本体と刃を開発するメーカーは少ない。

刃を担当した切削本部の辻本晋小野工場長は、「機械本体が刃の潜在能力を100%以上引き出してくれた」と、一体開発の強みを生かし切った。

開発機は従来の汎用機に比べ刃が8倍長持ちし、12倍の高速切断ができる。円盤状の刃を持ち、高速性が特長の丸のこ盤に比べても2倍の速さだ。数量が多く、短納期で高生産性が求められる自動車部品などの特殊鋼に向けた。

高速、長寿命のポイントの一つを、機械開発の同切削商品部の瀬戸章男部長は「タブーとされてきた構造」と明かす。バンドソーは二つのホイールにリング状にした刃をかけ、回転させてテーブル上のワーク(加工対象物)を切る。ホイールは正面に向かって立った構造であり、下方を周回時に刃を90度ひねり、ワークに刃を向ける。ひねるために回転速度の制限が大きく、刃は金属疲労を起こす。

開発機はひねりゼロの設計だ。ホイールを寝かし、常にワークのある下側に刃が向く。刃が手前と奥を平行して周回するため、ワークの長さは限られるが、想定した市場は短尺が多く、課題になりづらいと判断した。

ひねりゼロとはいえ、開発段階では、機械の設計を理由に刃が破断することがあった。逆に、刃を理由に思った寿命にならないこともあった。「刃へのダメージを低減する機械の工夫」(瀬戸部長)、「集中していた応力を分散する刃の工夫」(辻本部長)を加え、それぞれの課題を解消した。

考え抜いた末の開発成果を相手にぶつけた。辻本部長は「互いに追い越し追い越されの競争だった」と真剣勝負の毎日を振り返る。切磋琢磨が技術革新を生んだ。(六笠友和)

【製品プロフィル】

切断速度が低下する原因である、刃のひねりを生じさせない構造を採用した。刃の高速走行を実現し、生産性を高める。大径材料を大量に連続切断する用途に向く。超硬のこ刃「AXCELA HP1」を使い、直径50ミリ―310ミリメートルの材料を連続加工できる。同クラスの超硬丸のこ刃に比べ、切り代を約60%削減する歩留まりの良さも特長。

(2017/2/1 05:00)

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