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深層断面/カメラ“政権交代”なるか、ミラーレス陣営が相次ぎ戦略機種

(2017/2/2 05:00)

「最もいいカメラは一眼レフ」という常識に、ミラーレス一眼カメラが本気で挑み始めた。富士フイルムは、新製品発表の舞台に京都・二条城を選び、政権交代への意気込みを強調した。一眼レフは高い画質に加え、交換式レンズを持つユーザーが同じメーカーの機種に買い替える循環が強固だ。デジタルカメラ市場はスマートフォンに席巻された後、次はミラーレスでどう変わるのだろうか。(梶原洵子)

■中判センサー搭載タイプ、軽量・低価格化

【静物写真で威力】

  • 「GFX」を手に、自信満々の笑顔を見せる古森富士フイルム会長

「『GFX』がカメラの歴史を動かす」。富士フイルムの古森重隆会長は、商業写真向け高機能ミラーレス一眼カメラ「GFX 50S」の二条城(京都市中京区)での発表会で、こう力を込めた。150年前に二条城で行われた大政奉還になぞらえ、カメラの主役の座を狙う。古森会長は「GFXの追加で、ミラーレスで全ての撮影領域をカバーできる」と自信を示す。

GFXは、一眼レフカメラに搭載されるフルサイズのイメージセンサーの1・7倍の大きさの中判センサーを搭載している。画素数は約5000万画素。一つひとつの画素が大きく、より多くの光を取り込んで、立体感や奥行きを表現する。人物や風景、広告などの静物写真で威力を発揮できる。プロ写真家向けだが、1キログラムを切る重さと100万円を切る価格で、ハイアマチュアにも訴求する。

従来も中判センサー搭載のカメラは市場にあったが、高価で、重く、ピントを合わせにくかった。

このため、「フルサイズが一般的な上限となっていた」と、カメラ部門を担当する飯田年久光学・電子映像事業部長は説明する。この問題をGFXは解決した。

同社は、2010年ごろからコンパクトカメラがスマートフォンに市場を奪われはじめると、いち早く高級路線へ転換。GFX以外に、スポーツなど撮りたい写真に合わせてミラーレスカメラをそろえてきた。GFXを起爆剤に、2―3年後に10万円以上の高級ミラーレスカメラで、現在約3割のシェアを4―5割に引き上げる。

高級シフトは売り方にも表れる。従来、カメラは量販店などで買うことが一般的だったが、「車を売るように売りたい」(飯田事業部長)という。プロ向けのGFXはもちろん、スマホでいい写真が撮れるようになり、カメラを持つこと自体が特別になった。車の試乗やアフターサービスのように、販売面でも所有者の満足度向上を考えなくてはいけない。

古森会長は「写真の原点に戻り、人間のエモーションに訴える。まあ、自信満々だな」と笑みを浮かべる。事業構造改革で辣腕(らつわん)をふるった古森会長が、祖業の流れをくむカメラでも変革に挑む。

■静止画にも動画技術−被写体見失わず決定的瞬間

【新たな需要掘り起こし】

  • 変革を促すモルモットでありたい…とパナソニックの山根事業部長㊨

パナソニックは、旗艦モデル「ルミックス GH5」で新しい需要の掘り起こしを狙う。山根洋介イメージングネットワーク事業部長は、「いい意味で、業界のモルモットでありたい」と話す。提案するのは動画の可能性だ。

GH5は、映像制作のフォーマットに対応した動画を作成でき、静止画にも動画技術を使う。最高で高解像度「6K」の動画から1フレームを静止画として切り取る方法で連写するため、被写体を見失うことなく、決定的な瞬間を逃さない。ミラーレスが苦手とされていたスポーツシーンも得意だ。約1800万画素に相当する解像度で、大判プリントに対応できるようになった。これを機に、プロ写真家への販売に力を入れる。

  • パナソニックは「ルミックス GH5」で動画の可能性を提案する

4月から有償のプロ向けサポートプログラムを始めた。18年度には海外でも開始したい考えだ。

動画技術の強みは、マイクロフォーサーズサイズのイメージセンサーに裏打ちされている。フルサイズや中判サイズに比べ小さく、動きの速い被写体でも全体的にボケた映像になりにくい。それでいて、一般的な映像制作機器用のセンサーよりも大きい。「動画制作として、バランスの取れたサイズ」(山根事業部長)という。

技術的な進化に加え、先代モデル「GH4」で実感したプロ写真家のニーズの変化が、プロ市場への参入を後押しした。スマホで手軽に写真を撮れるようになり、プロ写真家にも動画などプラスαの強みが求められるようになってきた。このため、GH4は予想以上にプロから好評で、GH5はその意見を反映して作り込んだ。

同社のカメラブランド「ルミックス」は、登場して約15年ほどで、まだ歴史は浅い。山根事業部長は、「商品と販売の両方で、薄っぺらでない考えで作っていると伝えたい」と話す。

6Kの次は8Kを見据え、チャレンジを続ける。

■今後の動向−一眼レフ・ミラーレス、スマホユーザー攻略

望遠や広角など用途に合わせてレンズを選択するレンズ交換式カメラの中で、ミラーレスカメラの比率は着実に上がり、足元では約3割に上っている。同市場は、まずソニーやオリンパスなどがけん引し、一眼レフに強いキヤノンやニコンなども商品を拡充。今後、ミラーレス比率の拡大はさらに加速し、富士フイルムやパナソニックは、「19―20年ごろに5割を超える」と共通の見解を示す。

ただ、ミラーレスが市場を席巻するというわけではなく、一眼レフもミラーレスも平等に比較購入できるという状況だ。

パナソニックの山根事業部長は、「これからは撮りたい作品からカメラを選ぶようになる」と話す。富士フイルムやパナソニックの戦略モデルも、得意な撮影領域を絞っている。

一眼レフユーザーの愛着は強く、画質だけでなく、シャッター音や質感も魅力になっている。その分、一眼レフのレンズ所有者に対して商品を出し続ける責任があり、ミラーレス専業の方が大胆な商品提案をしやすい。また、ユーザーも世代交代する。

ミラーレスの開発競争を、パイの取り合いだけでなく、スマホから本格的なカメラへの乗り換えにつなげたいところだ。

(2017/2/2 05:00)

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