[ 機械 ]
(2017/7/11 13:30)
ユーロテクノ(東京都杉並区、03-3391-1311)は、欧州製の測定機や工作機械、金型部品の販売を手がける機械商社。スイスのアガトン社やオーストリアのアリコナイメージング社、ドイツのサーケ社などの日本総代理店を務め、精密加工の分野で顧客ニーズをくみ取った提案と情報提供を強みとする。金型部品では、「ガイドで金型は変わる」をキャッチフレーズに、金型の高剛性・高精度に寄与するローラーガイドや位置決めユニットの拡販に取り組んでいる。
独自性のある製品を提案
同社は1994年に現社長の小原修氏が設立した。従業員12人。①3次元測定機、②研削盤を中心とする工作機械、③金型部品の3本柱で事業を展開し、なかでもアガトン社製の金型部品は景気に左右されない安定した収益が見込める分野だという。
アガトン社は100年近い歴史をもつ精密機械メーカー。超硬合金のインサートチップの加工に用いる研削盤で知られる同社は、プレス金型や射出成形金型向けの高精度部品にも定評がある。ユーロテクノでは、アガトン社の金型部品のうち、日本国内で他社と差別化できるアイテムをピックアップして市場に投入している。代表的な製品が、金型の可動側と固定側の位置決めに用いるボールガイドやローラーガイド、位置決めユニットである。
金型にかかる力を考慮したガイド部品
アガトン社製ガイド部品の特徴は、金型にさまざまな方向からかかる力を考慮した設計・構造を採用している点にある。そのため、高速プレス加工や高荷重プレス加工でも精度を維持できる。ガイドポストとガイドブッシュの間でクッションの役目を果たすリテーナの種類により、同社のガイド部品は、ボールタイプとローラータイプに大別されている。
ボールタイプ(図1)の特徴は高速摺動でもボールが欠落しない独自のかしめ技術。これにより、3,000spmの高速プレス加工でも、高い位置再現性を発揮する。また、リテーナと組み合わせるガイドポストには、つば付き形状を採用。つばは金属を削り出して成形されており、日本で流通するガイドポストにはあまり見られないタイプ。ガイドポストのつばには、金型の傾きを抑制する効果があり、高い位置再現性と相まって、耐久性と精度の向上、長寿命につながる。同社営業チームの中道浩貴主任によると、「パンチの寿命を4~5倍に延ばしたケースもある」という。
ボールガイドの主な納入先はコネクター業界で、コネクターピンの抜きや曲げを高速で行う金型に多く採用されている。「プレス加工の高速化が進むコネクター業界では、1カ月の生産数が110億個のメーカーもある。そうしたユーザーから、アガトン社製のボールガイドは信頼を得ている」(中道主任)と、今後も堅調な需要を見込む。
ローラータイプは、ローラーをはめ込むケース材料に2000系アルミ合金を用いた7660シリーズ(図2)と、真鍮を用いた7663シリーズを揃える。7660シリーズに使われる「アガトンローラー」は、4カ所の点でガイドポストおよびガイドブッシュに接触する構造。これにより、ローラーガイドの横方向の回転を抑制し、プレスの上死点と下死点の間で金型プレートが動くことを防ぐ(図3)。プレートの位置精度を高めることで、パンチとダイの適正クリアランスを維持でき、高精度加工と金型の長寿命化に寄与する。
もう一方の7663シリーズには、7660シリーズとは別の「プロファイルローラー」が使われている。プロファイルローラーは、3カ所の線でガイドポストおよびガイドブッシュに接触しており、アガトンローラーに比べ剛性が高く、低速使用に適している。
同社では、7660シリーズを高速プレス金型や粉末冶金金型向けに提案。7663シリーズは、170℃の高温にも耐えられることから、射出成形金型やMIM(メタルインジェクションモールド)金型、ダイカスト金型向けに提案している。ボールガイドと合わせたラインナップで、さまざまな金型の高剛性・高精度ニーズに応えられるのが強みとなっている。
バリ発生を抑制する位置決めユニット
アガトン社製金型部品の中で「伸び代がある」(中道主任)のが、ローラータイプのリテーナを用いた射出成形金型向けの位置決めユニット「RFCS」(図4)だ。一般的に使用される位置決めブロックに比べ位置合わせ精度の低下が起こりにくく、製品精度の向上やメンテナンスサイクルの削減に寄与する。金型重量に応じた各種サイズをラインナップする。
RFCSの特徴の一つが、バリの発生を抑制するずれ補正機能。RFCSの先端に設けられた遊びにより、リテーナがずれを吸収する。ガイドピンを用いて50μm以内にずれを抑制したうえで、最大0.15mmの補正が可能という。
予圧によりローラーが弾性変形して摺動することで、クリアランスゼロを可能にしたのも特徴。クリアランスを小さくすることで高まる偏摩耗のリスクも大幅に軽減している。また、重量200kgの金型を対象に行った耐久性テストで、100万ショット(金型のずれ70μm)の耐用ショット数が実証されており、メンテナンスサイクルの軽減によるコスト削減も実現する。
RFCSは中型金型向け7990シリーズ、小型金型向け7992シリーズをラインナップしていたが、このほど既存製品に比べ耐熱性能を向上させた7993シリーズを追加した。リテーナ部分をこれまでのアルミ製から真鍮製にすることで耐熱温度を150℃→170℃にアップ。7990シリーズと同径のため置換えも可能である。
海外での生産性アップをPR
同社は今後、新規顧客を掘り起こすことで、売上げに占める金型部品の割合を3 割にまで高める方針。「ガイドで金型は変わる」のキャッチフレーズどおり、精度が必要で量産性が求められるコネクター分野ですでに実績を上げている。ユーザーからは、「2年間で部品交換ゼロ」の声も寄せられており、「海外の量産用金型に導入することで、生産性アップにつながる点をアピールしたい」(中道主任)。
欧州製金型部品を拡販するネックとして、高品質な反面価格が高い点があげられるが、「コストに見合うリターンがあるものをピックアップしている」(中道主任)。自動車業界などの動向に目を配りつつ、欧州製品ならではのよさを日本のモノづくり企業の立場に立って提案していく。
(編集部)
(2017/7/11 13:30)