[ トピックス ]
(2017/12/2 08:00)
筆者は、仕事現場で発生する悩みや問題を図で表現して克服した体験から、仕事の成果につながる業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを行っています。今回は、仕事で成果を高めるための経営資源の変化を事例から紹介させて頂きます。
営業で「選ばれる理由」は提案力
あなたはパソコンを販売している営業担当者です。得意先の社長から「我社も営業担当者全員にパソコンを持たせようと思う。ノートパソコン20台の見積もりを頼むよ」と依頼されました。あなたはどこまで見積もりますか?
自社商品であるノートパソコン20台、プリンター、ソフトウェアを見積もると量販店より高いと言われます。そこで、ソフトのインストール、ネット契約や接続設定、LAN配線などの作業を含めた見積もりを提出しました。今度は他社と見積もりで比べられます。作業工賃を「安くして!」と言われることがあります。
これはメーカーから仕入れた商品を単純に転売しているからです。顧客はどこから買っても同じものなら安い方が良いと思うのが普通です。作業をのせても、作業単価で比べられます。買い叩いても悪びれない社長もいます。要するに、あなたから「買う理由」が無いと「安くすれば買うよ」と言われるだけです。
では、何をどう見積もったら良いのでしょうか。得意先の社長が「どうなったら満足なのか、何を求めて見積りを依頼したのか」を正しく理解することが必要です。
そう考えると、「20人の営業担当者が、日々の営業活動で自在にノートパソコンを使って、提案書や見積書を効率的に作成して業績を上げる。その環境を築く。」と読み解くことができます。すると、20人の中にはパソコンの得意な人ばかりでなく不得意な人、初めて触る人もいると想像でき、使う予定の人たちの習熟度を確認することもできます。
現状が分かると、事前のパソコン教育や導入後のフォロー教育の必要性が出てきます。その他にも、パソコンのトラブルなど電話でのアドバイス、訪問サービスも組み合わせることができます。他にも、提案書や見積書、営業ツールの雛型の制作へと広げることもできます。
【図1】のように、自社と他社の商品やサービスとを組み合わせてソリューションとして提案することで、他社と差別化が図れ「選ばれる理由」となります。これを可能とするためには、自社商品の知識ではなく、顧客の真の目的を達成する提案力、顧客の満足をプロデュースする力が必要になってきます。
ソリューション=基本機能(モノ商品)+サービス
顧客の真の目的の達成を目指すと、「誰が」「どのように」提案するかでソリューションは大きく変わります。単純に“モノ商品”を売込んでも目的は達成できません。【図2】のように、ソリューションは目的を達成するために基本機能(モノ商品)にサービスを組み合わせたものとなります。メーカーから仕入れた同じ製品を販売しても、このソリューションの部分で大きく価値に差を付けることができ、業績の差につながります。
ソリューションを組立てる力は知的資産の蓄積の差
「知的資産」と言うと特許や実用新案などと考えられがちですが、普通の会社でも知的資産を蓄積した経営ができます。経済産業省では知的資産経営を提唱しており、【図3】のように知的資産は競争力の源泉です。これによって生まれる「強み」が顧客満足を生み出す提案力になります。
私がお勧めしている方法は、日々の現場での「気づき」、失敗からの「学び」を、
・成果の出る手順(プロセス)
・上手くやる方法(コツ・工夫)
として積み上げることです。
ビジネスの中心要素が「知的資産」になった
【図4】のように、従来の経営資源は「人、物、金」に、第4の経営資源として「情報」を加えた4要素が、一般的な経営資源とされており、これまでは情報で「物」の価値を高めることで営業担当者の活動をも支えていました。
しかし、情報も容易に入手でき差別化が困難な今日、自社ならではの「知的資産」による問題解決の提案力が求められます。困っている顧客の現状を出発点に、顧客の真の目標達成に向けて、それを実現する設計図を描くことです。
より良い設計図を描くために必要な事は、積上げた知的資産の豊富さが鍵です。これを、これまでの4要素に「情報」という括りに入れるには無理があります。しっかりと「知的資産」として要素に加え、経営資源に位置付けることが必要だと考えます。
これからは、顧客の真の目標を達成する提案力、実行力が仕事の中心になります。そのために必要な事は、経験から積上げた「知的資産」です。蓄積した「知的資産」で競う時代に打ち勝つために日々の現場で書き溜めて行きましょう。
(『新製品情報』2015年4月号掲載)
(毎週土曜日掲載)
【著者紹介】
池田 秀敏
有限会社テオリア 代表取締役
(業務プロセスデザイナー、図解エバンジェリスト)
1957年生まれ
出身:新潟県上越市
営業系システムの開発技術者として平成元年に独立。中小企業における多くのシステム開発経験の蓄積から、業務プロセスやコツ・工夫を図解で可視化して共有・伝承する仕組み作りを提唱。図解による業務改善セミナー、ワークショップ、講演、コンサルティング等、多岐にわたり活動中。
(2017/12/2 08:00)