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(2017/12/9 05:00)
何度も押し寄せている「女性の感性を生かした商品開発」ブーム
女性が開発をした商品がヒットしている―。そのような事例を聞くと、「よし、うちでも女性チームを立ち上げよう!」と考える企業は少なくないようです。時はアベノミクス、女性活躍強化も声高。女性の感性でイノベーションを起こし、企業や日本の発展に女性の力を生かしたいという時代の要請なのかもしれません。
しかし、この「女性の感性を生かした商品開発」と聞くと、私たちのような長年マーケティング業界に身を置く者としては、おもわず「またですか?」と言う言葉が口を付いて出てきます。何故なら30年前から再三聞いているお題目だからです。業界では「まだそのような事を声高に言っている会社があるのですね?」という冷やかな反応が返ってくることすらあります。主婦発想や読者発想の活用も同類、何度も押し寄せるこの種のブームの裏には、男性主導で作ってきた商品に行き詰まりを感じた企業が、何か新しい切り口を思いつきで取り組むことが多く見られます。
従来と異なる開発者が手掛けるという、うわべだけの施策で成功・失敗を評価しがちであり、残念ながら一過性のブームとして定着せず現在に至っています。
女性の感性を生かした商品開発の変遷
それでは、遡る事30年、1980年代より現在までの女性の感性を生かした商品開発の変遷を鳥瞰してみます。
●女性スタッフによる新製品開発が相次いだ1980年代
ファイブミニ(女性発想で成功した商品の代表格、女性開発チームの火付け役にも)は、女性の研究者3名の手により、女性にとって手軽で画期的な飲みやすいセンイ飲料として1988年に誕生。この頃、消費者研究専門の研究所が多く開設されました。
●技術主導に風穴を開けたiモードの1990年代
松永真理さん発案で、携帯電話からインターネットに接続し、種々のコンテンツを提供するサービスとして成功。技術主導で開発を行っていた分野に、女性が全く異なった視点で新たな市場を開拓した典型です。
●ネット上の主婦の意見を取り入れた2000年代
ネットでCGM(Consumer Generated Media)と言われる一般人の発信や、コミュニティでの意見が増殖。ベネッセコーポレーションでは650人の主婦ブロガーによる情報発信と交流で賑わうWEBサイト「口コミサンキュ!」で企業とコラボ。ローソン女子パン部等を開設。
●女性開発の商品領域が拡大する2010年代
ビールやクルマなど、女性中心の購入商品に限らず、幅広い分野で女性が発想したり、プロジェクトメンバーとなったり、女性チームで開発をした商品がヒット。
これら成功商品に見られる様に、敢えて女性が考えた商品と言わなくても、本質ニーズから発想する商品開発であれば一般性の高い良い商品が十分に生まれるはずです。
次回のPart2では、女性の感性とは何か、女性の開発マジックは本当にあるのか、また、女性が商品開発に参画する場合の課題についてお話をしたいと思います。
(『新製品情報』2015年7月号掲載)
(毎週土曜日掲載)
【著者紹介】
日置 孝子
株式会社ウェルコインターナショナル 代表取締役
(マーケティングコンサルタント)
東京学芸大学卒業
出身:京都
略歴:1984年より独立系マーケティ ング会社にて、40余社の市場調査、商品・事業開発に従事。2001年、富士通株式会社のインターネット新規事業「iMiネット」の立ち上げに参画、2002年、同事業独立会社の株式会社ライフメディアに転職。インタラクティブマーケティング研究所所長を経て、2003年、ウェルコインターナショナルを設立し現在に至る。
(2017/12/9 05:00)