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【電子版】マーケティングの出番ですか?(16)そのデザインはストーリーを語っていますか?

(2018/1/20 08:30)

筆者は、長年グラフィックデザインに携わっており、今回はデザインの視点からマーケティングコミュニケーションのあり方についてお話させて頂きます。

デザインの意味は?

広義な意味でも狭義な意味でも、「デザイン」という言葉は日常化してから随分年月が経ちます。昨今では、どんなジャンルのものごとにも「デザイン」という言葉が付着し、その存在感を高めています。以前は、ファッションデザイン、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、グラフィックデザインなど「もの」が主でしたが、現在では、グランドデザイン、コミュニケーションデザイン、生活デザインなど、「こと」に対する領域まで拡大し、その重要性が更に増しています。

外来語語源辞典(東京堂出版)によれば、デザイン(design)の語源は、デッサン(dessin)と同じく、ラテン語の「designare(線を引く、描く)」と「signum(印)」に基づきます。読者の皆様の中にはエンジニアの方も多いと思いますが、ご存知の様に「設計者」は「designer(デザイナー)」と訳されます。同じ様に「設計する」の英訳は「design(デザイン)」です。

エンジニアとデザイナー、分業化された現代においては、異なる職種として存在していますが、歴史を振り返ってみるとどうでしょう?

例えば、皆さんが良くご存知のレオナルド・ダ・ビンチとアレック・イシゴニス、前者は名画モナリザの作者で、後者は名車ミニの設計者です。ダ・ビンチは他にも、ANA(全日空)の昔のロゴマークのモチーフになったヘリコプターの原型のような乗り物の設計など、工学技術者としても高い評価を受けた天才です。

この二人に共通することは、優秀な「エンジニア」でもあり「デザイナー」でもあった点で、自ら設計、考案したものを、自分の手で姿かたちにする、それが人々に伝えるための最良のコミュニケーションであったと思われます。

このように捉えると、エンジニアの方々にもデザイナーが少し身近な存在に思えるのではないでしょうか?

1枚の名刺が語るストーリー

  • 【画像1】

それでは事例を交え、筆者の本業であるグラフィックデザインの観点より、ストーリーをデザインすることによるマーケティングコミュニケーションの必要性についてご紹介させて頂きます。

事例として、マーケティング・ディレクターでモータージャーナリストの繁浩太郎(しげ・こうたろう)氏からご依頼いただいた名刺【画像1】のデザインに込めたストーリーを解説します。

・まず、「SHIGE」の真ん中には「I(愛)」という芯が一本通っている。

・その愛のこもった芯が、悩みを抱えて相談に来られたクライアントのモヤモヤに突き刺さると、

・今まで曇っていたモヤモヤが、緑豊かに繁った木に変わる。

・そしてやがて、幸せを運んでくると言う青い鳥も飛んでくる。

ちなみに、モヤモヤ→緑の木のところのイラストは、繁氏ご本人が描いたものをベースに筆者が仕上げています。(依頼者に描いて頂くのは異例ですが、手間がかかる分、よりご自分のロゴに愛着を持っていただけます。)

幸い、繁氏からは「名刺交換する際に、非常にウケがよく、好印象を持たれる。」との評価をいただいており、クライアントの方々とのファーストコンタクト(いわゆる「つかみ」)にお役立ていただけているようです。

併せて、ストーリーのバリエーションとして特定場面での利用を想定した複数のデザインも作成しました。一番左はフォーチュンカードで、木に果実が実っており、クライアントとプロジェクトの達成イメージを共有したい時に用い、他の4枚は、春夏秋冬を表したカードで季節毎に使い分けます。

このように、ビジネスシーンに於いて印象に残るコミュニケーションができるかどうかは、その後につながる重要なきっかけとなります。

ストーリーがあればセールストークが弾む

今回の事例は1枚の小さな名刺のデザインでしかありませんが、プロダクトデザインやシステムデザインにとっても、ストーリーは非常に大事な役割を持っています。BtoBの商品はその機能、性能と価格が重視されますが、そこに何かしら、なるほどとうなずけるストーリーが込められることで商品競争力が更に強化されます。

「もの(製品)」や「こと(サービス)」には、必ず、設計者、企画者の想いがあるはずです。それを「もの」「こと」としての姿かたちにする、あるいは、それが難しい場合は伝えるためのストーリーを考えることがマーケティングコミュニケーションの肝であり、お客様に伝わり共感が得られたストーリーは、必ず、従業員のモチベーションアップにもつながる良好な社内コミュニケーションに役立ちます。

(『新製品情報』2016年8月号掲載)

(毎週土曜日掲載)

【著者紹介】

池山悦朗

エンピツ・グラフィックス代表

(デザイナー)

1958年生まれ、京都府出身

桑沢デザイン研究所リビングデザイン研究科ID専攻卒業

(株)本田技術研究所、ゼロワンデザイン(株)、日産自動車(株)にて、30余年に渡り先行開発、デザイン企画・調査・戦略・広報など様々な分野のデザインに従事

趣味:ギター・妄想・宅録

<受賞歴>

・グッドデザイン賞 2007/2013

・JCD2007デザインアワード銀賞

・朝日新聞 2014創作時事用語コンテスト審査員特別賞「みうらじゅん賞」

(2018/1/20 08:30)

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