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【電子版】マーケティングの出番ですか?(19)ワークショップの事業モデル

(2018/2/11 07:30)

前回に引き続き、今回は弊社で開発したワークショップサービスの事業企画を一例に、オープン化の潮流を交えた新事業の企画・検討方法の一端をご紹介させて頂きます。

事業企画はポジティブ思考で!

成功した製品や事業、企業が喧伝される中、現実は大企業、中小企業、公共機関を問わず、失敗の事例に事欠きません。

成功の理由、失敗の理由は様々ですが、成功ののち、持続的に成長できず失敗に陥るケース、失敗ののち、起死回生の一手で成功軌道にのるケースなど、成否も時間軸によって評価が逆転することもあります。

日本の経営においては、迅速な意思決定やイノベーションが重要な課題とされていますが、スピードと革新は成功も失敗も加速化する要因となるため、時に長所が短所になることもあります。

それでは、失敗の可能性を内包する未知の事業にどの様なマインドで取り組むのが最善かと言えば、楽観的、悲観的、客観的の中では、比較的楽観的(ポジティブ)思考を採用すべきだと言われています。その最大の理由は、ポジティブ思考において「リスクに挑戦する」姿勢が可能であるからです。これの反対は「石橋を叩いて渡る」リスク回避の姿勢です。もっとも、この様な単純な二元論で事業の意思決定は行えません。「リスクに挑戦する」姿勢から事業の可能性を追求するのがポジティブ思考の役割であるとすれば、一方で「リスクをマネジメントする」リアリズム思考も必要です。失敗の予防策や失敗した場合のセーフティネット等を計画するのは、ポジティブ思考の不得意な分野です。

「リスクに挑戦する」には、ポジティブ思考に加え、もう一つ重要な要素があります。それは成功するための「動機付け」です。2016年のリオ五輪は日本人の活躍で大いに沸きましたが、“世界一になる”、“名声・名誉を得る”等の達成目標の前に、“やり甲斐がある”、“成長(進歩)したい”、“現状を打破したい”、“未知の領域を知りたい”等が成功(目標)に向かう源泉となります。一握りの勝者(成功)に対して他は敗者(失敗)という現実に果敢に挑戦する組織、個人には、目標設定、そして邁進する「強い動機」が必要です。

成否に関わる最後の要素は「時の運」です。事業でもスポーツの分野でも、優れているものが必ず成功する、勝利すると決まっているわけではありません。“勝ち負けは時(時流、時節)によって左右される”こともあります。

事程左様に成功を手にするのは容易ではありません。

9つの事業要素をモデル化

それではここで、「ポジティブ思考」を念頭に、ビジネスモデル・キャンバスをベースにワークショップサービスの9つの事業要素をモデル化してみました。ちなみに、ビジネスモデル・キャンバスとは、2008年にAlexander Osterwalder氏が考案した事業の設計手法の一つです。9つの要素は、「Value Proposition(価値提案)」を中心に各要素が連動しており、主に新規事業の企画、実現可能性の検討に利用されています。

サービス事業における新たな挑戦

セミナーやワークショップは、教育サービスを代表として、古くから提供者(講師、ファシリテーター等)と利用者(聴講者、受講生)を中心とした5W1Hの6要素(「いつ(When)、どこで(Where)、だれが(Who)、なにを(What)、なぜ(Why)、どのように(How)」)からサービスモデルが形成されており、その中でもサービス価値として「なに(What)」が最も重視されています。が、その価値を高める(改善していく)確固たるビジネスモデルは確立されていません。

今回、インターネットによるオープン化の潮流を利した新たなビジネスモデルの実現可能性を、PDCA改善サイクルを基に作成してみました。

ご覧頂くとお分かりの通り、「提供者」、「利用者」の二極(従来モデル)に「オープン化」の三極(エコシステムモデル)が加わることで、“実験”による計画精度の向上、“成果”のアーカイブ化による知識の共有、多様な観点からの評価・“助言”、そして、改善事項の採否、優先順位等における意見・“意思決定”など、改善サイクルの実効性アップ、加速化が期待できます。

上述のビジネスモデルは教育サービスに限らず、広くサービス業、消費財メーカーにおいて企画・検討の余地があり、また、モノづくりが大きな技術革新を迎える中、生産財メーカーにおいては、顧客、委託先、サプライヤー、競合他社等との新たなエコシステム構築の潜在性を秘めており、以下の様な動向がこれからの市場を形成、牽引していくと予想されます。

・クローズド型組織からオープンラボ等、外部連携組織の模索

・ライドシェア等に見られる個人所有から共同利用

・コワーキングスペースに見られる事務所や会議スペースを共有したオープンな仕事環境

・大手企業における「副業解禁」

・女性層、シニア層におけるクラウドソーシングによる仕事形態

・電子商取引における購入者による製品、販売者の評価情報の発信・共有

・Q&Aサイトや「クックパッド(料理レシピ)」に見られる知識・情報の発信・共有

・ホンダとヤマハ発動機における国内向け二輪車の一部車種の生産・開発等の提携検討

(『新製品情報』2016年10月号掲載)

【著者紹介】

武道誠芳

株式会社テンプロテクシー代表取締役

(マネジメントコンサルタント)

所属:(株)テンプロクシーにて、コンサルティングサービス、マーケティングサービス、ロボットビジネスを展開

生年:1960年

出身:富山県

学歴:横浜市立大学商学部卒業

経歴:外資系コンピュータメーカー、システムコンサルティング会社、サイパン航空事業への参画後、1996年起業

(2018/2/11 07:30)

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