[ ICT ]
(2018/2/9 05:00)
いろいろある人工知能(AI)技術をどう使えば自社の業務やサービスに効果を発揮するか――。そんな悩みに応える仕組みをアクセンチュアが開発した。その背景にある考え方とともに、非常に興味深い話だったので紹介したい。
「AI Hubプラットフォーム」とは
アクセンチュアが先頃、用途に合わせて最適なAI技術を組み合わせて活用することができる「AI Hubプラットフォーム」を開発したと発表した。会見で説明に立った同社デジタルコンサルティング本部マネジング・ディレクターの保科学世氏は、「複数のAIエンジンから最適なエンジンを組み合わせ、人間のオペレーターとの協調も可能なプラットフォーム」だという。
【図1】がAI Hubプラットフォームの概要である。右側の説明にあるように、「AIエンジン群の指揮者・編曲家」であり、「情報の一元管理」を行うことができ、「人とAIを適材適所で連携」し、「豊富な業務知識を基にしたオペレーション」を可能にするのが、AI Hubの特徴である。しかも図の左側にあるように、AI Hubは外部との接点となるさまざまな機器・サービスを通じて利用することができる。
保科氏はAI Hubについて、「業種を問わず、顧客や社員向けの各種サービス、営業デジタルアシスタントといった用途を想定している」という。
【図2】は、「人事問い合わせAIチャット Randy-san」と名付けたアクセンチュア社内活用事例である。図の右側にあるように、社内事例でも複数のAIエンジンを活用している。
さらに、会見ではAI Hubを使ったデモンストレーションとして、グループウェアのような使い方を紹介。スケジュール確認に「Google Calendar」、リサーチにNTTコミュニケーションズの「COTOHA」、経費計算に「Google Cloud Vision API」、会議調整に「IBM Watson Conversation」といった特性に合わせたAIエンジンをAI Hub上で組み合わせ、LINE上のチャットボットとして活用する様子を見せていた。
AI活用プラットフォームを開発した理由
では、アクセンチュアはなぜ、このようなAI活用プラットフォームを開発したのか。保科氏は【図3】にあるように、AI活用のアプローチにおいて陥りがちな誤解とそれに対する要諦を説明した。とくに図の右側にあるAI活用の要諦で、「用途/目的別に最適な技術とその限界を理解し、AIを活用する領域と人手でカバーする領域の見極めが重要」、および「自社の強みを活かせる領域で、優れたクラウドサービス、APIなどを活用し、素早くサービスを立ち上げ、継続的に進化させていくことが重要」との指摘は、それこそ大事なポイントだと感じた。
さらに、「現時点では、AIが実施すべきところ、人間が実施すべきところを見極め、どのように協調させていくかを考えなければならない」として、人間とAIがそれぞれ得意とする領域を【図4】のように分類した。こうした考え方に基づいて開発されたのが、AI Hubプラットフォームである。
アクセンチュアでは、このAI Hubを単独の製品やサービスとして提供するのではなく、個別用途の提案に盛り込んでいく考えだ。AI Hubの仕組みや背景にある考え方はいかにもアクセンチュアらしいが、他のサービスプロバイダー、さらにはこれからデジタルを活用したサービスを展開しようと考えている企業にとっても大いに参考になるのではないだろうか。
(隔週金曜日に掲載)
【著者プロフィール】
松岡 功(まつおか・いさお)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。
(2018/2/9 05:00)