[ ICT ]
(2018/1/26 05:00)
日本のIoT推進における国際競争力はどれくらいのものか。総務省が先頃、2016年の実績とともにその根拠となる指標を明らかにした。IoT市場を映し出す実績と指標ともいえるので、今回はこの話題に注目したい。
総務省が「IoT国際競争力指標」公表
総務省が先頃公表した「IoT国際競争力指標(2016年実績)」は、主要10カ国・地域の企業1500社を対象として、IoT市場とICT市場に分け、2016年の製品・サービスの金額ベースのシェアと、研究開発やM&Aなど潜在的な競争力の指標を基に、国・地域ごとのスコアと順位を算出したものだ。それによると、日本は総合順位およびIoT市場で米国に次ぐ2位となった。
【図1】は2016年の実績とともに、2015年実績からの推移を示している。IoT市場のスコアを見ると、1位の米国が2015年の「64.6」から2016年は「66.6」に伸ばしているのに対し、日本は「60.8」から「60.9」へと横ばいとなり、その差が広がっていることが明らかになった。
では、その根拠となるIoT国際競争力の指標とは具体的にどのようなもなのか。
【図2】がその構成要素である。総務省によると、「ICT産業をIoT市場と従来のICT市場に分けて分析していること」「主要10カ国・地域の企業競争力についてシェアをスコア化し、総合ランクを算定していること」「製品・サービスの競争力と、研究開発やファイナンスなどからなる潜在的な競争力に関する指標により算出していること」などを踏まえて策定しているという。
【図2】によると、IoT市場は「スマートシティ」「ヘルスケア」「スマート工場」「スマートエネルギー」に分類されている。これらと従来のICT市場の構成要素がどのように関係しているのかが分かりやすい図になっており、IoT市場を大まかに捉えるうえで参考になるのではないか。
ものづくりのIoT活用ノウハウ、グローバル展開へ
【図3】は、IoT市場で分類された各分野における2016年まで4年間の各国シェアの推移である。2016年を見ると、日本はスマート工場が37%で1位を占めており、ヘルスケア(23%)やスマートシティ(22%)も健闘している状況だ。ただ、ヘルスケアもスマートシティもこれまで4年間の推移を見ると、減少傾向にあるのが気になるところである。
こうしたIoTの国際競争力について、アクセンチュアの江川昌史社長に聞いたところ、「とりわけ製造業におけるIoT活用は日本が進んでおり、ものづくりの効率化や品質向上のノウハウをグローバルに展開できるチャンスは大いにある」とのこと。同氏と同じく、製造業におけるIoT活用は「日本のお家芸」と言う業界のキーパーソンは少なくない。これは総務省のレポートでもスマート工場に対する評価に表れている。
ただ、筆者が少々気になったのは、2016年実績の日本のシェアとして、従来のICT市場に含まれているクラウドが4%と、米国の78%に比べて圧倒的な差があったことだ。クラウドはIoT活用の基盤になるだけに、もう少し日本のシェアアップを図りたいところだ。それがIoT国際競争力のアップにもつながるだろう。
(隔週金曜日に掲載)
【著者プロフィール】
松岡 功(まつおか・いさお)
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT」の3分野をテーマに、複数のメディアでコラムや解説記事を執筆中。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌の編集長を歴任後、フリーに。危機管理コンサルティング会社が行うメディアトレーニングのアドバイザーも務める。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年生まれ、大阪府出身。
(2018/1/26 05:00)