[ 政治・経済 ]
(2018/4/4 20:30)
WTOにも提訴
【北京、ワシントン時事】中国政府は4日、米国から輸入する大豆や自動車、航空機など合計106品目に25%の関税を上乗せすると発表した。トランプ米政権による中国の知的財産権侵害を理由とした貿易制裁への報復措置で、世界貿易機関(WTO)にも同日提訴した。世界第1、2位の経済大国による「貿易戦争」の懸念が一段と高まっており、世界経済に悪影響が及ぶ恐れがある。
中国が報復対象とした米国産品の2017年の輸入額は約500億ドル(約5兆3000億円)だった。朱光耀財政次官は4日の記者会見で、「中国は貿易戦争を望まない」と指摘。関税の実施日を改めて公表するとし、協議を通じた問題解決を目指す考えを強調した。
トランプ大統領も3日(日本時間4日)、ホワイトハウスで記者団に「(貿易赤字には)我慢できない。われわれは中国と交渉する」と語った。米中はともに協議に前向きな姿勢を示したが、貿易戦争を回避するための糸口は依然見えていない。
大豆、自動車、航空機はいずれも米国からの主要輸入品。関税の上乗せは輸入価格の上昇を招き、中国の消費者に与える影響も大きい。特に大豆は、米国産の代替品をすぐに探すのは難しいが、強硬策に踏み切った。
中国商務省は「米国が国際的な義務に違反したことで中国は緊急事態に陥った」と強く非難。中国の利益を守るため、中国対外貿易法や国際法の原則などに従い、報復措置を決めたと説明した。
米政権は3日、通商法301条に基づき高関税を課す品目の原案を公表。情報通信機器や自動車、産業ロボットなど約1300品目に25%の関税を適用するとした。
今回の中国による報復対象となった大豆は対中輸出が多く、米大豆業界からは「経済的な危機にさらされる」などと悲鳴が上がっていた。
米国内では昨年秋から一連の対中措置を見越して鉄鋼価格が上昇しており、「既に悪影響は出ている」(米通商専門家)との見方もある。米中間の報復合戦がエスカレートすれば、日本を含めた世界各国の貿易などにも悪影響が及ぶ。米中摩擦をにらんで金融市場が混乱すれば、順調な回復基調をたどる世界経済に影を落とす恐れがある。
(2018/4/4 20:30)