[ 政治・経済 ]
(2018/4/11 16:00)
【ワシントン時事】米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は10日、シリアのアサド政権による化学兵器使用疑惑を受け、トランプ米政権が昨年4月の武力行使より大規模な軍事攻撃を検討していると報じた。より強力な対応を取ることで、将来の化学兵器使用を抑止するのが狙いという。
政府筋によると、トランプ政権は複数の標的に対する攻撃や、数日にわたる爆撃などを検討している。英仏両国やサウジアラビア、カタールもアサド政権への断固とした対応を支持しているが、実際にどの国が軍事攻撃に参加するかは不明。
ロシアやイランの支援を受けるシリア政府軍は強固な対空、対ミサイル防衛システムを備えている。爆撃機や戦闘機での攻撃は危険度が高いため、昨年同様、海上艦から巡航ミサイル「トマホーク」を大量発射する飽和攻撃が主体になるとみられる。
シンクタンク「新米国安全保障センター」(CNAS)のニコラス・ヘラス研究員は、時事通信に「米国は前回の攻撃でアサド政権による化学兵器使用を抑止することができなかった」と指摘。「大規模攻撃でアサド政権に本当に痛い思いをさせない限り、化学兵器使用を思いとどまらせることはできない」と語る。
米軍は昨年4月、地中海に展開した駆逐艦2隻から、中部ホムス県の空軍基地にトマホーク59発を撃ち込んだ。同基地は化学兵器の保管に用いられていたとされ、米軍は航空機のほか弾薬庫、防空システムなどを破壊した。ただ、アサド政権は今年に入り、塩素ガスなどの化学兵器を立て続けに使用しているとされる。
米、軍事行動へ英仏と調整 対シリアで「共同歩調」
【ワシントン時事】トランプ米大統領は10日、シリアでの化学兵器使用疑惑への国連安保理の対応が不調に終わったことを受け、アサド政権に対する軍事行動に向けて英仏両国と調整を本格化させた。アサド政権を支えているロシアとの関係が一段と悪化していることから、同盟国の結束が重要との判断がある。
「化学兵器使用への報復で協調する」。トランプ氏は8日以降、フランスのマクロン大統領と2度、メイ英首相とも電話会談し、シリア問題での連携を申し合わせた。閣僚級の接触も続けられている。トランプ氏は南米訪問を中止しており、合同で軍事攻撃に踏み切るかどうかは「近く判断」(マクロン氏)される見通しだ。
トランプ政権は2017年4月、化学兵器使用への報復でシリアを攻撃。この時、トランプ氏は即断したものの、同盟国との調整や国連決議がなかったことから内外で「単独行動」への批判が高まった経緯がある。
さらに、トランプ政権はこの1年、シリアに深く関与するロシアとの関係を、外交官の相互追放や制裁強化などで極度に悪化させた。シリア攻撃でロシア軍に被害が及べば、一触即発の事態に陥りかねないため、同盟国と「共同歩調」を取ることに気を配っているようだ。
(2018/4/11 16:00)