[ オピニオン ]
(2018/7/31 05:00)
監視社会をテーマにしたジョージ・オーウェルの近未来小説『1984年』の人気が世界中で沸騰している。独裁者による監視国家の恐怖を描いた古典だ。
舞台は84年(執筆当時には未来)の超大国オセアニア。そこは、一党独裁により個人の思考が徹底的に管理され、人々はユートピアの反対となる全体主義のなかで生きている。人間の尊厳が死滅したような恐ろしい世界で、人々は論理的思考ができないような厳しい統制を受け、常に監視されている。
主人公のウィンストン・スミスの仕事は歴史の改ざん。指示に従い、党の都合がよいように過去の新聞記事を書き換えていく。他の人々と同じくビッグ・ブラザーへの忠誠を取り繕いながら生活していたものの、ウィンストンは党への疑問や不満を募らせ、党のイデオロギーに反対する「犯罪思考」を抱くようになる。
オーウェルの小説が売れているのは、大国で誕生した大統領の政策をはじめ、私たちが実際に生きる世界の流れが小説に描かれたウィルソンの生きた世界を彷彿(ほうふつ)させるからだろう。
私たちは街のあちこちで監視カメラの目が光る「記録される」21世紀の監視社会にいる。「予言の書」が発する警告に耳を傾けたい。
(2018/7/31 05:00)