[ 政治・経済 ]
(2018/7/31 15:30)
【カイロ=時事】米国がイラン核合意からの離脱表明に伴い対イラン制裁を8月初旬に再発動するのを控え、イランの通貨リアルが暴落を続けている。29日には実勢レートで節目の1米ドル=10万リアルを突破し、前日比14%超の下げ幅を記録した。イランを追い詰めるトランプ米政権への不満から反米強硬派が態度を硬化させる中で、制裁緩和による経済好転を公約に掲げてきた保守穏健派のロウハニ政権は対応に窮している。
リアルの安値更新は止まらず、既に対ドルで約12万リアル近辺まで下落。今年4月以降の変動分だけで価値が半減した。報道によると、イラン中央銀行は声明で「最近の為替の推移は、敵の陰謀が主因だ。経済的な問題を悪化させ、市民の不安をあおろうとしている」と米国を暗に批判。ロイター通信は、経済妨害行為を働いたとして、司法当局が29人を逮捕したと伝えた。
米国は日本や欧州諸国などに対し、11月初旬までにイラン産原油を全面禁輸するよう要求している。これに先立つ8月初旬には、イラン政府による米ドル紙幣調達や金・貴金属取引などに制裁を科す見通し。発動されれば、イラン経済が一段と苦境に陥り通貨暴落に歯止めがかからず、物価上昇に苦しむ市民の不満が先鋭化する可能性もある。
イランは核合意にとどまる条件として、欧州諸国に経済権益の保証を求め続けてきた。しかし、米国がイランと取引を続ける第三国企業への「二次制裁」を警告する中で、欧州側が米国を刺激するような対策を講じるのは難しくなっている。
(2018/7/31 15:30)