[ 機械 ]
(2018/10/22 05:00)
工作油剤・クーラントは金属の切削加工をはじめ、さまざまな製造現場で活用されている。潤滑性の確保のほか、加工時の発熱を抑えるための冷却、切りくずの除去などが主要な機能で、加工の効率化だけでなく、生み出す製品の品質をも左右する。環境負荷低減などの観点から水溶性油剤の使用が製造現場に広がるなか、メーカー各社は製品の品質向上や長寿命化といったニーズに沿った開発により、需要のさらなる掘り起こしを図っている。
メーカー各社 ニーズに即し製品開発
2種類に大別
工作油剤は切削および圧延、プレス、引き抜き、鍛造といった金属加工に広く利用されている。金属加工向けに鉱物油(ベースオイル)を主成分とする不水溶性油剤と、ベースオイルおよび各種の添加剤を水で希釈した水溶性油剤の2種類に大別される。加工時の発熱を抑えるため、冷却作用が高い水を添加剤の媒体としたクーラントは、研削や研磨工程などで多く使用される。冷却を第一目的としながら潤滑や防錆、切りくずの付着防止など多様な機能を持つ製品が各メーカーから販売されている。
工作油剤は工具の表面に分子膜を形成することで加工対象物(ワーク)との摩擦を軽減する。これによって工具の摩耗を減らし加工効率をアップさせる。分子膜は加工の際の癒着を防ぐため、被削材の一部が工具刃先に付着し、新しい刃先のようになる構成刃先も抑制する。
適用範囲が拡大
仕上げ面の加工品質や潤滑性能を重視する場合、油成分の性能を生かせる不水溶性油剤が広く使用されてきた。添加剤によって用途に合わせてさまざまな機能も発揮する。ただ、油成分の流出やオイルミストの発生などによる作業環境悪化という問題や工具の性能向上も手伝って、水溶性油剤の適用範囲が徐々に拡大してきた。
モノづくり現場では、複雑な形状の加工を短時間で仕上げる高い生産性が求められるようになっており、加工速度向上への取り組みが進んでいる。このため、工具やワークの加工熱上昇への対策として、切削加工を中心に、冷却性能に優れる水溶性油剤の利用が増えてきた。
水溶性油剤 潤滑性能向上
水溶性油剤は水で希釈して使うので油成分の使用絶対量が少なく、オイルミストも発生しにくい。火災の危険性もほとんどない。
しかし、水溶性油剤は加工後の液の腐敗・劣化に伴う異臭発生など、工場の環境悪化の要因ともなる。腐敗臭は工場で勤務する現場作業者の定着率にも影響を与えると言われるほどだ。
こうした問題を解消するためのさまざまな改良・工夫により、現在では、水溶性油剤の潤滑性能は飛躍的に高まり、微生物の発生などの課題を克服した製品が多様に登場している。
運用コスト減も
使用期間の短さに対応するロングライフ化のほか、微生物やバクテリアが繁殖しにくいバイオスタティックタイプなどの製品が数多く市場投入されている。主成分に強アルカリ性電解水を使って防腐性を高め、既存の水溶性油剤を使用した場合にかかっていたランニングコストや廃液処理費を大幅削減する技術もある。
また潤滑油やクーラントなど加工液の性状測定や試験・分析を行い、加工時の不良やトラブル発生の原因の調査を支援するソリューション事業を展開する企業もある。ユーザーの競争力向上をサポートするこうした製品・技術・サービスは、今後も発展を続けていくとみられる。
(2018/10/22 05:00)