[ オピニオン ]
(2019/1/1 05:00)
米国と中国による貿易戦争が繰り広げられ揺さぶられる中で、日本企業はどうしていくべきなのか。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を取り入れていくことは重要だ。加えて、知的財産戦略を経営の根幹に据えて、知財と事業が一体となった経営に転換していくことが求められている。
液晶パネル、リチウムイオン二次電池、カーナビゲーションテレビ。かつて日本企業が技術開発で世界をリードし、市場を立ち上げ、一時世界シェアを独占した。その後、数年から10年の短期間でシェアを急激に失い、アジアとの競争で苦戦を強いられた。技術経営(MOT)に精通した小川紘一氏がまとめた「プロダクト・イノベーションからビジネス・イノベーションへ」(東レ経営研究所2010年4月号)によると、カーナビは、03年に日本企業のシェアはほぼ100%だったが、07年には約20%まで落ち込んだ。
この間、企業が知財に手をこまねいていたわけではない。カーナビは相当程度の特許投資をしても、シェアが低下した。
MOTの分野には、「プロダクト・ライフサイクル」という考え方がある。新製品の「導入期」は、その製品が市場に浸透するまで売り上げにつながらない。ニーズが高まると、売り上げが急激に伸び、先行者が利益を得る「成長期」に入る。ただ、魅力的な市場に新規参入も増え、市場規模は拡大し、価格競争も激しくなり「成熟期」に移る。最後は市場規模、利益率ともに低下し、製品市場は寿命を終える「衰退期」を迎える。
知財戦略も同様なステージがある。導入・成長期にある事業なら、開発投資を進めて特許を量産する、日本企業が得意とする戦略が有効だ。問題は、衰退期に近づいた事業の場合、こうした戦略は難しい。必須特許を取得しにくいためだ。この場合、機能性とは別の付加価値で勝負するか、技術革新を起こし衰退期から導入・成長期へさかのぼるなどの戦略が必要だ。
事業の知財ステージに応じた知財戦略によって、世界競争を生き残る道は拓けてくる。
(2019/1/1 05:00)
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