[ オピニオン ]
(2019/1/25 05:00)
経済産業省が挑む教育改革をめぐる議論が第2幕に入った。ITや人工知能(AI)などの最新技術を教育現場に活用することで、生徒それぞれの理解度や関心に応じ主体的かつ効率的な学びを目指す意義には賛同できる。ただ、技術偏重に陥るあまり、手段が目的化しないよう高い視座から教育の本質を捉えてほしい。
経産省が目指すのは、ITやAIといった先端技術を取り入れた教育。2018年6月に公表した提言で、教育(education)と技術(technology)を組み合わせた「EdTech(エドテック)」の普及を打ち出し、均質性や自前主義を大前提とする公教育のあり方に一石を投じた。
産業政策を担う経産省が文部科学省の所管領域に踏み込む異例の事態に、教育界からさまざまな反応があった。実は時を同じくして文科省も「ソサエティー5・0に向けた人材育成」と題する報告書を発表。社会の変化に対応し、「学びのあり方も変革する必要がある」との認識では両省は一致している。
低成長下の日本を担うのは、社会が直面する課題をイノベーションで解決できる人材だが、問題はどう育てるかだ。経産省は、エドテックを活用した教育プログラム開発の実証事業を実施し、1月下旬に再始動した研究会での議論では、これら成果を検証。新たな施策につなげる。
一方、積み残された重要な課題は大学改革だ。教育関係者のひとりは「日本の教育のあり方を根本的に規定しているのは大学入試。その仕組みが変わらなければ本質的な改革にはつながらない」とみる。20年度に実施する大学入試改革では、評価の力点を思考力や判断力に置く形にあらためられた。これにとどまらず、社会が求める人材をどう育てるか、議論を深めたい。
教育は国の礎だ。黒板を背に、一人の教師が大勢の生徒を前に授業を進める明治以来、150年以上にわたり続いてきた光景を一変させる可能性がある議論の行方を一人ひとりが関心と覚悟を持って注視したい。
(2019/1/25 05:00)