[ オピニオン ]
(2019/5/17 05:00)
工場というと機械が並ぶ製造ラインが思い浮かぶが、実は機械などの運転に必要な電気や水、圧縮空気などを供給するユーティリティー設備が欠かせない。東京理科大学理工学部経営工学科の日比野浩典准教授は、伊藤忠テクノソリューションズと共同で、ユーティリティーのうちエネルギー消費量の多いコンプレッサー(圧縮機)に着目、生産ラインと圧縮機の稼働を同時に評価するシミュレーション技術を開発した。
工場の生産システムは部品の流し方や段取り替えなど製造ラインを中心にすることが多かった。「圧縮空気は過剰に送っておけば間違いないという感覚だったが、エネルギー削減にはユーティリティーと製造ラインの関係性を最適化する必要がある」(日比野准教授)と考えた。
圧縮機のエネルギー消費量を減らすには低圧化が有効だが、低圧化で圧縮空気の供給量が減ると生産ラインのサイクルタイム遅延や不良品の発生につながりかねない。そこで圧縮機の低圧化が生産性に与える影響を評価するためには、生産ライン側の需要に応じて圧縮空気の供給圧を設定する必要がある。
そのため、別々だった生産ラインのシミュレーションと圧縮機側の数値流体シミュレーションを統合し、生産性と消費エネを同時に評価する連携シミュレーションを開発した。具体的には製造ラインが稼働、停止する時刻を数値流体側に入力し、生産ラインのシミュレーションに応じて圧縮空気の供給圧力設定値を変えていくことにより、エネ消費の削減を実現することができることを明らかにした。実際の工場に近い圧縮空気を使用する生産設備が3台並んだ小規模生産ラインを対象にシミュレーションしたところ、有効に機能することが確認できた。
2016年11月に発効したパリ協定で世界の平均気温上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑えた上で1・5度未満を目指すことが決まった。生産性を維持しながら温室効果ガス排出量を削減することが急務となっている製造業にとってこうした研究成果が役立ちそうだ。
(2019/5/17 05:00)
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