[ オピニオン ]
(2019/6/21 05:00)
2018年7月に西日本から東海地方を中心に数日間にわたって豪雨が続いた。気象庁によると「総雨量は1982年以降の豪雨災害時の雨量と比べても極めて大きい。今回の豪雨には地球温暖化に伴う水蒸気量の増加の寄与もあったと考えられる」という。企業への影響は被災地にとどまらず、サプライチェーンの寸断で全国に広がった。
また、昨年7月中旬以降は東日本の月平均気温は、7月として、64年の統計開始以来第1位となった。今年もまもなく同じ季節が訪れようとしている。地球温暖化が緩和されたわけではないので、豪雨や強力な台風、猛暑などのリスクはさらに高まると考えるべきだろう。
気候変動はさまざまな形で企業の事業活動に影響を及ぼしている。2011年のタイの洪水のように、海外の生産拠点の被害やサプライチェーンを通じた間接的な影響を受けることもある。日本企業にとっても記憶に新しいところだ。また、食品産業などでは気候変動で原材料の農作物が十分に調達できなくなるリスクもあるだろう。
今年の環境白書は「企業が現在または将来の気候変動リスクを加味した対策を加えていくことで、事業の持続可能性を高めることが可能となります。またリスク対応のみならず、適応の取り組みに資する製品やサービスを売り出すことで、新たな事業機会を創出する『適応ビジネス』の取り組みも広がっています」と記している。
さらに、同白書は適応ビジネスを「適応を促進する製品やサービスを展開する取り組み」と定義し、災害の予知・予測システム、暑熱対策技術・製品、節水・雨水利用技術などをあげている。日本でも一部の企業で取り組みが始まっているという。
地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が来年発効するが、温室効果ガス排出がすぐに減るわけではない。企業は気候変動適応策を確立するとともに業種によっては気候変動適応に関連する技術や製品、サービスを開発し、国内外に提供する新たなビジネスに挑戦する好機といえるのではないだろうか。
(2019/6/21 05:00)