[ オピニオン ]
(2019/6/24 05:00)
政府が「骨太の方針」とともに閣議決定した2019年版の「成長戦略実行計画」は、第一章として日本経済の現状分析と目指すべき方向の明示にボリュームをさいた。「多くの優秀な若手を投入して議論した」(日本経済再生本部事務局)という分析結果は、第4次産業革命による経済社会や個人の生活の激変に主眼を置いたものだ。
この中で政府は、法制面を含めた環境整備を期限を切って実現すると約束する一方で、産業界に具体的なアクションを求めている。特に従来の日本の労働生産性の伸び率が低く、収益力が伸び悩んでいることを問題視した。産業界にとっては耳の痛い指摘だ。
具体的な例としては、買収・合併などの企業結合についてデジタル競争時代をふまえ、市場シェアは低くともデータ独占度の高い企業に対する新たな規制を設けるとしている。データ駆動型の新ビジネスを海外大手に譲らない姿勢を示し、日本勢の伸長を期待したものだ。
逆に疲弊の目立つ地域経済に関しては、住民サービス維持の観点から、地方金融機関や公共交通などの経営統合の特例を認めることを明示した。地域に高シェア企業を誕生させ、収益の低下による事業縮小という負のスパイラルを脱しようという政策といえる。
むろん、従来の“岩盤規制”が本当に解消されるかどうか不透明な部分もあるだろう。だがこうした競争環境の変革は、民間の意識改革を狙ったものだ。関係業界が、これにどう応じるかが問われよう。
他方、70歳までの就業機会確保を努力義務とし、将来の法制化の道筋を示すなど企業の新たな負担発生も予告している。人口減少下における労働力確保は中小企業をはじめ多くの企業で極めて深刻な問題となりつつある。高齢者の活用は今後、ますます経営者が正面から取り組むべき課題となろう。
官民の協調なしに、こうした社会変革は実現しない。産業界としても政府の率直なメッセージに向き合い、イノベーション実現の道を探りたい。
(2019/6/24 05:00)