[ オピニオン ]

社説/ホルムズ海峡タンカー攻撃 エネ自給率の向上を急げ

(2019/6/20 05:00)

イラン沖のホルムズ海峡付近で起きたタンカー攻撃は、1次エネルギーの多くを中東産の化石燃料に頼る日本の危うさを、あらためて浮き彫りにした。核開発問題をめぐって米トランプ政権が、イランへの強硬姿勢を鮮明にする中で、中東・湾岸情勢の先行き不透明感が強まっている。日本はエネルギーの安定確保に向け、自給率を高める取り組みを急がなければならない。

タンカーへの攻撃について、米国はイラン犯行説を主張して非難しているが、イラン政府は関与を否定し、両国間で緊張が高まっている。イランがホルムズ海峡の封鎖に踏み切ったり、米国が軍事行動に出る事態に発展したりすれば、中東産原油の海上輸送に支障が及びかねない。原油輸入量の9割近くを中東に依存する日本は、深刻な打撃を受ける。

日本は2度の石油ショックを踏まえ、原子力や再生可能エネルギーの活用で化石燃料への依存度を下げ、バランスの良いエネルギー構成を目指す政策に力を入れてきた。中東・湾岸地域における地政学的リスクの高まりなど、将来のさまざまな不確実性に備え、エネルギー自給率を高める取り組みを、さらに加速させる必要がある。

気候変動への対応も急務だ。地球温暖化防止に向けた国際的な枠組み「パリ協定」の実効性には、米国の離脱表明で疑問が生じたものの、温室効果ガスの削減には原子力や再生エネの比率を高め、脱化石燃料を図る取り組みが欠かせない。

一方、国内産業のコスト競争力にも留意する必要がある。人口減少に伴う人件費上昇や、高率な法人税などの課題を抱える日本の産業界にとって、コストが割高な再生エネの急拡大は足かせとなる。モノづくりを柱とする日本の産業構造を維持するためには、発電時に二酸化炭素(CO2)が出ず、コスト面でも優位性が高い原子力に、もっと目を向けるべきではないか。

この機にエネルギー安全保障政策のあり方を問い直し、持続可能で、地球環境にも産業にも優しいエネルギー自給体制の構築を急いでもらいたい。

(2019/6/20 05:00)

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