[ エレクトロニクス ]

【電子版】英ダイソン、シンガポールで人材採用加速 製造業不振は「好機」

(2019/7/14 05:00)

  • ダイソン本社敷地内の研究開発施設(18年9月、ウィルトシャー州マルムズベリー=ブルームバーグ)

【シンガポール=時事】英電機大手ダイソンは本社の移転先となるシンガポールで、事業拡大に取り組んでいる。当地では製造業が米中貿易摩擦などのあおりで不振にあえいでいるが、ダイソンはそれを人材獲得の「好機」と前向きに受け止めている。

 シンガポールの5月の製造業生産は前年同月比2.4%減。中でも、主力のエレクトロニクス(電子製品)部門が10.8%落ち込んだ。シンガポール紙ストレーツ・タイムズ(電子版)によると、ダイソンのローワン最高経営責任者(CEO)は8日記者会見し、製造業の不振は「われわれにとっては好機だ」と語った。ローワンCEOは活動拠点をシンガポールに置いている。

  • シンガポール・ジュロンのデジタルモーター製造施設。既に現地で1000人以上のエンジニアを採用しているという(同社提供)

 ダイソンのデジタルモーター施設では、衰退したシンガポールのディスクドライブ業界の技術者を多数受け入れた。外資誘致を担当するシンガポール経済開発庁(EDB)によると、国内の電子機器製造分野では2013-18年に9800人以上の雇用が失われ、その大部分がコンピューター周辺機器とデータストレージ部門によるものだった。

 ローワンCEOは21年までに電気自動車(EV)を発売する計画に沿ってソフトウエアエンジニアリングとデジタルマーケティング関連を中心にシンガポールで人材採用を行う計画だと説明した。ダイソンはシンガポールで既に1150人を雇っている。

  • ダイソンはシンガポール拠点に加えてマレーシアには掃除機のマザー工場を有している(18年9月、ウィルトシャー州マルムズベリー=ブルームバーグ)

 また、西部ジュロンにある自動車工場の生産力と生産量を増強するとともに、技術革新拠点を置く南西部のサイエンス・パーク内の施設を拡大する予定だという。

 本社を英国からシンガポールへ移転する背景についてローワンCEOは、税制上の動機ではないと主張。その上で「製造や、商品開発の最終段階が行われる場所の最も近くに事業の中心を置くことは理にかなっている」と説明した。東南アジア全域で売り上げが伸びていることも理由という。

(2019/7/14 05:00)

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