[ オピニオン ]
(2019/8/14 05:00)
大型台風の上陸が懸念されるシーズンだ。風水害から従業員や設備をどう守るか。「タイムライン」の考え方を取り入れて被害を抑制したい。
東日本大震災以降、企業の事業継続計画(BCP)の策定は進んだ。ただ台風や豪雨についてはかなりの確度で予測できるにもかかわらず、地震に比べて対策の優先度は低い。
台風のように時間の猶予がある災害には、タイムラインが有効だ。具体的には国、自治体、企業、住民などが連携し、発災が予測される時刻に向かって、あらかじめ策定した計画に沿って実施主体が時系列で防災行動をとることをいう。米国では2012年に大型ハリケーン『サンディ』がニューヨーク市を直撃したが、タイムラインを策定していたため避難が円滑に進み、被害を最小限にできた。
日本でも近年、時間あたりの雨量に増加傾向がみられるなど台風や豪雨による被害は多発・激甚化する傾向にある。拠点が少ない中小企業ほどタイムラインの考え方を取り入れ、BCPの高度化と守備範囲の拡大を図る必要があろう。
自社の拠点が台風の進路にあたる場合、自治体や気象庁の情報をもとに、従業員が安全を確保できる時刻に帰宅の指示を出す。河川の氾濫が予測される場合には設備をかさ上げしたり、部材・仕掛品を安全な場所に移動したりするなど初動対応を前倒ししたい。雨量監視・メール警報システムの導入や、配電盤の上層階設置といった日頃の備えも大事になる。
タイムラインを企業行動に定着させるには、想定した被害が発生しない“空振り”を組織として許容できるかどうかがカギになる。経営者が空振りによる経済的・時間的ロスを意識しすぎるあまり、行動が委縮(いしゅく)しては元も子もない。
また計画を策定しただけでは画餅にすぎない。大雨が迫るタイミングをとらえ、自治体などとの連携も含めて計画の実践を繰り返すべきだ。従業員に習慣づけるとともに、より実効性のある対策に絶えず改善を加えていくことが肝要だろう。
(2019/8/14 05:00)