[ オピニオン ]
(2019/9/5 05:00)
防衛費の急増を国民に納得してもらうためにも、産業育成の視点を忘れてはならない。
防衛省は2020年度予算の概算要求で、5兆3222億円(前年度予算比6・3%増)の大幅増を求めた。これとは別に米軍再編関係などゼロにできない経費を、額を定めない事項要求として盛り込んだ。20年度の防衛関係費が過去最大にふくれあがるのは確実な情勢だ。
東アジアの周辺国が不透明な軍備拡張を急ぐ一方で、日米同盟の深化によって日本の果たす安全保障上の役割は大きくなっている。ある程度の防衛費の増加には、国民も産業界も理解を示すだろう。ただ厳しい財政事情の中で予算を割く以上、これまで以上に防衛費が日本の防衛産業の育成・発展に寄与しなければなるまい。
防衛省の概算要求を見ると、人件・糧食費は微減で、増加分はすべて物件費である。特に装備の調達などにあてる歳出化経費は、2兆1614億円(同17・3%増)と急増している。
最も伸び率が大きいのは航空機の調達だ。しかし、次世代戦闘機「F35A」は、前年度までの国産メーカーによる組み立てから完成品輸入に転換。実質空母化する護衛艦「いずも」に搭載予定の短距離離着陸型戦闘機「F35B」や新型空中給油機「KC46A」も輸入する。いずれも国内の航空産業の育成には結びつきにくい。
これを補うためか、防衛省は次期国産戦闘機の開発着手を表明した。航空機メーカーにとっては待望の決断だが、予算面では事項要求にすぎず、獲得できたとしても少額にとどまる恐れが大きい。
一方、艦艇の調達では新型護衛艦2隻と、潜水艦1隻の建造を盛り込んだ。造船業界の下支えとして有効だが、額で見ると微増にとどまっている。
また「多次元統合防衛力」獲得に向けた宇宙・サイバーにも新規予算を配分している。これらが関係企業の技術力向上に役立つことを期待する。
査定に当たる財政当局も、そうした視点で予算編成を進めてほしい。
(2019/9/5 05:00)
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