(2019/10/7 05:00)
型枠や込枠の自力生産も視野に、鋳物産業を守っていく決意
江井(えねい)鋳造所は明治時代初期に創業した老舗鋳物メーカー。現在は産業用モーター部品を主力に、精度が要求される各種薄物鋳造品などを手がける。「試作品やニッチ分野のオーダーも大歓迎」(江井敬彦社長)としており、多品種少量生産への即応体制が同社の強みだ。
F1造型機を6台揃える。「中国からの来訪者に、今でも使っているのかと驚かれた」(同)というように、手作業であり量産向きの設備ではないが、それゆえ小回りがきく。同設備とパレットコンベアライン、注湯ラインを同じ高さに配置。ほぼ移動なく作業負担が軽減できるよう工場をコンパクトにまとめている。
量産品は鋳造部門を持つ大手メーカーや海外での生産が進む。専業メーカーとして生き残りをかけ、全社員を多能工として育成し、あらゆるオーダーに対応できる柔軟な体制を構築。品質保証のため分析機を導入して評価技術も磨いている。
南相馬市は東日本大震災の被災地だが、同社は地震、津波の被害は免れた。しかし原発事故で警戒区域に。郡山市に避難し、工場を間借りし操業したものの、これまで月産40トンだった生産量がキャパシティの問題もあって10トンにとどまる。そこで翌年には現工場に戻り事業を再開した。
一度切れた販売ルートを繋ぐのは困難を極めたが、新規開拓などを通じ、売上げは震災前の7割程度まで回復した。このところ関西地区への納品も出てきている。一方で同業者の廃業もあり、木型を引き継ぐケースも。鋳造用の型枠、込枠の自力生産も視野に、鋳物産業を守っていく決意だ。
株式会社江井鋳造所
連載#05
所在地 福島県南相馬市小高区上浦字中村迫436
社長 江井 敬彦氏
設立 1956年(昭和31年)
資本金 100万円
社員数 15人
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(2019/10/7 05:00)