(2020/6/2 05:00)
不織布は繊維を織ったり、編んだりせず、繊維同士を絡ませたり、機械的、化学的に結合させることによってシート状にして生産する。布のように「織る・編む・縫う」といった工程を必要としないため、大量生産できることも特徴の一つ。また二次加工を施すことで、さまざまな機能性を加えることができ、医療・衛生用や衣料用から産業資材にまで幅広く活躍している。
昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響でマスクなどの衛生用品が品薄となり、繊維メーカー各社でも原料となる不織布の増産が進められている。
マスク用安定供給へ
不織布は製造工程が繊維をシート状(ウェブ)にする工程と、繊維を結合させる工程がある。繊維を織ったり編んだりする必要がなく大量生産できるためコスト削減が図れるのが強み。また多様な原料や製法を組み合わせてさまざまな機能や形状に仕上げられるため、その用途先は幅広い。
特に医療・衛生用は主要な用途先の一つだ。経済産業省の生産動態調査によると、2019年の国内の不織布生産量は前年比6.3%減の32万1362トンと4年ぶりの下落となった。中でも医療・衛生用が同17.1%減の7万7593トンとなったことが響いている。その背景には、米中貿易摩擦などによって、主要な輸出国である中国への紙おむつの輸出量が減少したことが影響している。
しかし、現状は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、マスクをはじめとする衛生用品の需要が逼迫(ひっぱく)している。メーカーはマスクの安定供給を進めている。それに伴い、繊維メーカー各社ではマスク用の不織布の増産、生産体制の整備が加速している。また国内のみならず、タイやインドネシアなど国外での生産体制強化も図っている。
医療・衛生用の需要が高まる中、開発現場では、より高い性能を発揮するため、素材や製法、構造などの複合化が進んでいる。例えば、スパンボンド法とスパンレース法を組み合わせることでマイクロ繊維不織布を生産。より繊維を細くでき、フィルターに用いるとバリアー性を向上できる。
一方で、あらゆる業界で持続的な社会の実現のため環境に優しい製品を展開していく中で、繊維メーカー各社でも、生分解性プラスチックを活用した不織布の製造や、不織布をリサイクルし、二次利用する試みなどが行われている。多様な業界で重要な役割を果たしている不織布は今後も活躍の場を広げていくことだろう。
(2020/6/2 05:00)