社説/心のバリアフリー 五輪機に真の共生社会の実現を

(2021/1/11 05:00)

東京五輪・パラリンピックのレガシー(遺産)として、心のバリアフリーによる「真の共生社会」の実現を目指したい。

2020年6月の国会でバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)改正案が成立、施行された。施設や整備のバリアフリーがどれだけ進んでも、本当に必要なのは、それらをスムーズに利用できる環境だ。路線バスやタクシーでの車いすの乗車拒否、障がい者用駐車場への一般車の駐車など、さまざまなケースが指摘される。

啓発活動や学校教育を通じて、困っている人に一声掛ける、優先席を適切に利用するなど、一人ひとりが心の障壁を下げることが重要だ。

日本人は内気だから一声が掛けられないとも言われる。社会がコロナ禍に直面している時だからこそ、勇気を持ってこうした空気を変えたい。年を取れば車いすが必要になる可能性もある。障がい者や高齢者の困難さを、わが事と捉えたい。

駅や乗り物などのハードを対象とする交通バリアフリー法(通称)の施行から20年がたった。06年には、不特定多数が利用する建築物のバリアフリーを進めるハートビル法(同)と統合してバリアフリー新法(同)となり、ハード対応は大きく進んだ。こうした中、足りなかったのが心のバリアフリーだ。

日本の大動脈である東海道新幹線が、心のバリアフリーの象徴となるかも知れない。現在、16両編成の列車に車いすスペースは2席分しかなく、車いすグループでの旅行は困難だった。赤羽一嘉国土交通相の共生社会実現への強い思いで、五輪開幕前の21年7月1日以降に導入する新車両から6席分を義務づけることになった。既存車両にも改修の努力義務が課される。

新幹線で車いす旅行をする姿が当たり前になれば、人々の意識も変わる。JR東海は五輪が1年延びたのを前向きに捉え、可能な限り多くの列車で整備する計画。世界のパラリンピアンにホスト国の新しい姿を見てもらいたい。バリアフリーは国の成熟度そのものを表している。

(2021/1/11 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン