(2022/3/24 05:00)
エネルギー安定供給のためには、安全が確認できた原子力発電所の再稼働を含めた体制の整備が必要だ。
連休明けの22日、東京電力と東北電力の管内に初めて発令された「電力需給逼迫(ひっぱく)警報」は、経済活動の基盤を揺るがした。多くの国民は家庭や職場で照明や暖房を抑制しつつ、揚水発電の残量が減っていく発表に神経をとがらせざるを得なかった。
主たる原因は、16日深夜に発生した最大震度6強の福島県沖の地震で、同地域にある複数の火力発電所が停止したことだ。揚水発電の活用、企業の節電や自家発電のたき増し、家庭の節電行動で、停電という最悪の事態を免れたことは評価されよう。しかし当面は、寒波の襲来や他の発電所の運転に支障が出れば電力が不足しかねない不安定な状態が続く。
見過ごしてはならないのは、こうした電力危機が近年、何度も起きていることだ。事故を未然に防ぐことはできないが、十分な発電余力があれば回避できたケースも多い。電力の安定供給が揺らいだ大きな要因は、東日本大震災後に原発を停止したまま、太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーへの転換を急いだことだ。老朽火力発電停止も不安定さに拍車をかけた。
原発の安全を再点検するのは当然だ。しかし、すでに改修を終えた原発の再稼働への努力を怠った責めは免れない。地元住人の不安に対しては、政府と事業者が一体となって丁寧に説明し、稼働を実現させたい。
電力逼迫時の頼みの綱が揚水と他地域からの電力融通だった状況も、東日本大震災当時とそっくりだ。みぞれまじりの荒天で太陽光の出力が見込めないのは仕方ない。再生エネの不安定さは周知のことであり、これを大規模に導入するには、揚水の整備や電力系統の強化、蓄電池の新設に取り組む必要がある。
今回の危機は国民に日本の電力供給の脆弱(ぜいじゃく)さを思い知らせることになった。関心が高まる今こそ、エネルギーのあるべき姿を示し、理解を得る取り組みが欠かせない。政府が前面に立つことを望む。
(2022/3/24 05:00)
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