産業春秋／カンカンとランランの頃を思う

ジャイアントパンダのカンカンとランランが日本に贈られたのは１９７２年。当時、官房長官だった二階堂進氏が羽田空港に出向き、専用機で来日した２頭を迎えるほどの国賓級待遇だった。白黒の愛くるしい姿は一大ブームに。

７２年９月、田中角栄首相（当時）と中国の周恩来首相（同）が日中国交正常化の共同声明に署名。これを記念して２頭のパンダが日本に贈呈された。当時、中国の国内総生産（ＧＤＰ）は日本の３分の１程度だった。

日本は政府開発援助（ＯＤＡ）や民間企業の技術支援などで中国の成長に寄与。２０１０年にはＧＤＰで日本を抜いて世界２位に成長し、３０年前後には米国を抜いて１位に躍り出るとの予測も。

新疆ウイグル自治区や香港での人権弾圧、東シナ・南シナ海への海洋進出に見る覇権主義的な行動、台湾有事への懸念など、中国をめぐる安全保障上の課題が山積する。

２３日開催の日米首脳会談では、軍事・経済でインド太平洋地域における存在感を増している中国を念頭に、日米同盟の強化などを確認する。５０年前に小学生だった筆者はパンダのぬいぐるみをねだった記憶がある。半世紀の歳月を経て、中国の景色はすっかり変わってしまった。