(2023/12/12 05:00)
工程集約、生産効率2倍
「多品種少量ではなくて多品種単品にこだわっている」。アイジーエヴァース(愛知県刈谷市)の稲垣徹也社長が自信をのぞかせるのは自動車部品などの金属加工だ。同社は5月、刈谷市内に本社工場を新設。稼働したのが3台の大型マシニングセンター(MC)とそれぞれにつながっているパレットハンドリングシステム。稲垣社長が「ドリームライン」と呼んでいる自動切削加工のシステムだ。(名古屋・星川博樹)
「平日の夜間、そして土曜日、日曜日にフル稼働している」というシステムは、DMG森精機の5軸MCに加工対象物(ワーク)を載せるパレットを6台搭載した自動搬送システムをつないだもの。いったんセットしたら6種類のワークの加工が終わるまで1工程で動き続ける。
5軸MCを駆使する複雑な切削加工を3軸で行う場合、後に放電加工が入るなどして4、5工程増えることが多い。アイジーエヴァースは5軸加工1工程で完成するのが強みだ。5軸加工を始めたのは2008年。当時はまだ5軸加工機の精度に不安があった。今でも部品加工は5軸よりも3軸MCの方が高精度と考える技能者は多いが、同社は「段取り替えが大幅に削減できて工程集約できる」(稲垣社長)として5軸加工による精度出しに取り組み始めた。
そしてワークを載せるパレットを自動交換できるシステムとMCを組み合わせ段取りを自動化し、大幅な工程集約を実現。3軸で4工程必要だったのが5軸1工程になり、生産能力は2倍に跳ね上がった。「もはや切削加工では5軸MCとパレットハンドリングの組み合わせによる自動化は不可欠」(同)という。
土日の会社休業日であってもDMG森精機の3台のMCは稼働している。この3台を動かせるのは社内に4人だけ。月曜日から通常の仕事の合間を縫い、週末稼働に向けてプログラミングなどの準備を進める。金曜日の夕方にはそれぞれのパレットに形状や素材が異なる6種類のワークがセットされ、社員は帰宅。MCは月曜日まで稼働する。不具合が発生した場合はアラームが出て担当に知らされる。準備を怠ると自動生産システムも停止し、それまでの準備が水の泡となる。「これができるのはミスを犯さない周到な準備ができる者だけだ」(同)。
5軸MCとパレットハンドリングシステムを駆使できるのは、アイジーエヴァースに切削加工のノウハウが蓄積されているから。MCを動かし精密加工するだけにとどまらず、段取りや工具選定などの技能者の多くの経験がベースになっている。その技術力はDMG森精機の「第18回切削加工ドリームコンテスト」の産業部品加工部門で金賞として評価された。受賞した「巨大極薄リング」は直径約150ミリメートルの王冠形状のワークを最小0・5ミリメートルの厚さにしてミリング加工などでプラスマイナス0・02ミリメートルの精度で仕上げた。
「高品質のモノづくりと納期短縮で、お客さまに喜んでもらえる」と稲垣社長は自動化のメリットを強調。同時に「ベースになる技術力があってこそ自動化ができる」(同)ことも忘れない。
(2023/12/12 05:00)