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(2024/9/16 05:00)
女性患者の未来広げる
(総合1から続く)兄の影響で小さい頃から生物が好きで、山形大学大学院の農学研究科では哺乳類の卵子に関して研究しました。学生時代の学びを生かしたモノづくりがしたいとの思いで就職活動をする中で「印刷会社がヘルスケア?」と非常に驚いたのがTOPPANホールディングス。その意外性が面白く、事業が多分野だからこそ新しい技術を構築できそうだと考えて入社しました。
現在まで3次元(3D)細胞培養技術「invivoid」に関する研究に携わっています。当社と大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授が共同開発した独自の生体材料を使って多様な細胞を立体的に積層して制御し、生体内の構造に近い組織を体外に再現する技術です。
私はこの技術に関する共同研究講座を設けている阪大で、2021年から招聘(しょうへい)研究員として取り組むチャンスをもらいました。テーマは乳腺モデル。乳がんの患者さんは乳房を摘出後にインプラントや脂肪細胞注入などで乳房再建しても母乳合成の場となる乳腺は再建できず、母乳育児が困難になる場合が多くありました。
「与えられた環境をムダにしない」ことを大切に、積極的にいろんな人と議論して地道な努力を積み重ね、乳汁様物質を合成できる乳腺モデルを開発。24年4月には成果として発表できました。現在は作れる成分が限られているため、完全な母乳の再現を目指して研究を続けています。
再生医療や培養食品など多様な面で社会貢献できる技術ですが、個人的には女性の選択肢の拡大につながると期待します。母乳育児が困難な女性や妊娠などでキャリアを断念した女性が選びたかった未来の一つを提供したいです。
最近は漫画の推しのカラーである緑のワンピースを着て、新潟・佐渡に聖地巡礼に行ってきました。一見、真面目そうなのに中身は熱い男。推しの好きなところです。(文=熊川京花、写真=冨家邦裕)
◇TOPPANHD 事業開発本部総合研究所ヘルスケア研究室研究員 鈴木 瑞穂(すずき・みづほ)さん
(2024/9/16 05:00)