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有機合成化学分野で光を活用、光照射装置と光反応評価装置を開発

(2024/8/26)

カテゴリ:商品サービス

リリース発行企業:岩崎電気株式会社

有機合成化学分野で光を活用、光照射装置と光反応評価装置を開発

光技術の新たな活用で医薬品原材料などの製造プロセスにおける省資源化を目指す


RPRシステムに搭載する光照射装置

岩崎電気は、リサイクルフォトリアクター(以下、RPR)システムに搭載する「光照射装置」及び、光化学反応に関する基本的な評価を行うための「光反応評価装置」を開発しました。
岩崎電気は、東京理科大学(薬学部薬学科教授 高橋秀依)、株式会社ワイエムシィ(代表取締役会長CEO 山村隆治)と共同で、合成困難な医薬品原材料などを高収率かつ高純度に得られる製造プロセスの確立に向けて、光異性化反応を利用したRPR技術の研究開発(※1)に取り組んでまいりました(図1)。
RPRシステムにおいては、目的とする光化学反応を効率的に起こすための光反応器(フォトリアクター)が重要な役割を担いますが、本研究の中で、岩崎電気は独自の光学系を搭載した「光照射装置」(特許出願中)を開発し、実用化に向けたシステムの構築に大きく貢献しました。

光反応評価装置(左)及び電源装置(右)

一方、本研究を進める中で、光反応プロセスの検討に際しては、対象となる反応物質に対して光がどの程度作用しているか、といった照射量・エネルギーなどの光のパラメータと反応量の関係性について、定量的な評価がこれまで重要視されてきませんでした。
岩崎電気はこの点に着目し、有機合成化学分野における光反応の活用に向けた基礎的な反応データを取得することを念頭に置いた、光の波長や照度、照射時間を簡便に変更、調節できる「光反応評価装置」(※2)を開発しました。

※1 本研究は、科学技術振興機構(JST)の研究成果最適展開支援プログラムA-STEP(JPMJTR213B)による支援を受けて実施されました。
※2 開発した光反応評価装置は、日本プロセス化学会 2023年サマーシンポジウムに出展しました。

図1 リサイクルフォトリアクター技術(※3、4)(図1は東京理科大学 2023年6月6日プレスリリースより引用)

※3 エナンチオマー(鏡像異性体):2つの分子の構造が互いに鏡像の関係にある化合物。物理化学的な性質は同じですが、旋光性が異なります。
※4 ラセミ混合物:鏡像関係である2つのエナンチオマーの混合物。ラセミ化が完全に進むと、2つのエナンチオマーの存在比は50:50になります。
光反応評価装置
概要
この度開発した光反応評価装置(図2)は、波長の異なる3種類のLED※5を搭載しており、主にシャーレなどの容器内の溶液を試料として、所定の照射条件(波長・照度・照射時間)での光照射が可能です。
光化学反応においては、対象となる材料の吸収特性に応じた適切な波長を選択する必要があることから、波長ごとに照度や照射時間を個別に設定制御が可能な本装置を用いることで適切な照射条件の評価ができます。

図2 光反応評価装置(左:外観、右:各波長LED点灯時の様子)

※5 標準仕様として、365nm、420nm、470nmの波長のLEDを搭載しています。ご要望や用途に応じて波長の異なるLEDへの変更も可能です。
使用例(※6)
東京理科大学薬学部 高橋研究室において、光反応評価装置を用いて医薬品原材料であるスルホキシド(※7)(基本骨格構造)のラセミ化反応(※8)について評価を行いました。
図3は、ラセミ化反応の進行度合いを光学純度(※9)として表したときの、光の照射量(照度×照射時間)に対する挙動を示しており、照射量と光学純度が直線性を示していることがわかります。
本装置を活用することにより、目的とする反応を進行させるために必要な照射量について定量的な評価ができます。
結果として得られた光化学反応に必要な照射量、あるいは材料の劣化や変質を伴うような過剰な照射量をもとに、実際の生産ラインなどに使用する光照射装置の設計に活用、反映させることで、照射対象物の過剰照射による劣化や材料ロスを低減させるだけでなく、効率的な光化学反応による生産性や品質の向上にもつながることが期待できます。

※6 試験評価データは、東京理科大学が提供。
※7 2つの炭素原子がスルフィニル基[-S(=O)-]に結合している一群の化合物。
※8 純粋な光学活性分子の立体化学が変化して、鏡像の関係にあるもう一方の光学活性分子との混合物になること。
※9 光学異性体(互いに重ね合わせることができない鏡像異性体)の純度を示す指標。

図3 光反応評価装置による照射量と光学純度の関係(医薬品材料のスルホキシド(基本骨格構造)のラセミ化反応)

そのほかの用途/応用例
- 可視光域での光化学反応の評価
- 表面洗浄・改質などにおける評価
- 光重合・架橋反応などの評価
- 微生物の紫外線感受性評価

岩崎電気では、光のもつ可能性を探求し、持続可能な循環型社会やグリーンケミストリーの実現につながる環境に配慮したものづくりプロセスに関わる技術開発を推進してまいります。
論文
本共同研究の成果は、国際学術誌「Journal of Organic Chemistry」にオンライン掲載されました。
2023年5月8日
Conversion of Racemic Alkyl Aryl Sulfoxides into Pure Enantiomers Using a Recycle Photoreactor: Tandem Use of Chromatography on Chiral Support and Photoracemization on Solid Support
2024年6月5日
Isomerization of E-Cinnamamides into Z-Cinnamamides Using a Recycling Photoreactor
関連記事/プレスリリース
東京理科大学プレスリリースにオンライン掲載されました。
2023年6月6日
逆転の発想で、無駄なく目的のキラル化合物だけを増やして回収する ~キラル化合物を高収率で選択的に合成する新たなリサイクルフォトリアクターを開発~
2024年7月29日
E-アルケンから合成困難なZ-アルケンを高効率かつ高純度で合成 ~リサイクルフォトリアクターでZ-体のみを連続的に増やして回収~
IWASAKIテクニカルレポート
岩崎電気では、これまでにも微生物の殺菌・不活化に必要な紫外線照射量の算出など、光を定量化させるための評価手法について研究を重ねてきました。
技術資料
芽胞形成菌の紫外線感受性(その1)
芽胞形成菌の紫外線感受性(その2) - 枯草菌芽胞 -
紫外線殺菌における指標微生物の紫外線感受性(その3)
水処理分野で使用される紫外線照射装置の性能評価
QCM法による誘導結合酸素プラズマ下の活性酸素種検出
レーザー誘起蛍光法によるOHラジカル密度計測

※商品改良のため、仕様・外観を予告無しに変更することがあります。

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