[ オピニオン ]
(2016/10/25 05:00)
10年後の建設産業はどうあるべきか。国土交通省は有識者会議を設置し、法制度の見直しを含む基本的な枠組みの検討を始めた。建設産業は生活や社会を支える重要な役割を担う半面、人材不足や生産性の低さなど課題が山積している。将来性のある魅力的な産業にするために、大胆な提言を期待したい。
労働集約産業である建設産業は、少子・高齢化の影響を大きく受ける。国交省の試算によると、2015年度に330万人いた技能労働者が25年度には286万人に減る。この時の市場規模予測からみて、47万―93万人の幅で技能労働者が不足する。このギャップをどう埋めていくのか。
若者の入職や定着を促すには労働環境の改善が不可欠だ。しかし建設現場で「4週8休」の休日を実践している工事は1割以下しかない。この現状を見直す必要がある。一方で、労働日数がそのまま給与に反映される日払い給の形態が多いため、休日を増やそうにも一筋縄ではいかないのが実情だ。
生産性の向上も重要課題となる。国交省は建設現場の生産性を高める施策「i―Construction(アイ・コンストラクション)」を進めている。ICT(情報通信技術)を活用し、25年度までに生産性を2割向上する目標を掲げた。今後はAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を施工で利用することが想定される。こうした新技術に対応した現場や制度が必要になる。
このほか、地域のインフラの担い手でありながら経営状況が厳しい地域の中小建設会社への配慮も大切だ。また昨年発生したマンションの基礎杭(くい)問題に象徴される工事品質の確保のあり方や、年度末に工事完成時期が集中する公共工事の発注など検討課題は多い。
国交省は17年6月をめどに、これら将来の建設産業の方向性をとりまとめる。建設産業の社会的な役割を踏まえながら、固定観念にとらわれずに柔軟な発想で検討することを望む。業界に活力を与える新たな枠組みを打ち出してほしい。
(2016/10/25 05:00)