[ オピニオン ]

社説/韓国・朴大統領が退陣表明−日韓の経済関係の悪化を恐れる

(2016/11/30 05:00)

韓国の朴槿恵大統領が29日、任期前に辞任する意向を表明した。友人の女性実業家・崔順実被告の国政介入疑惑によって国民の信頼を失い、与党の一部からも“名誉ある退陣”を求められる事態になっていた。

昨年末、旧日本軍の慰安婦問題で日韓両国が最終解決を約束したことで、ふさがっていた両国間のパイプが、ようやく機能しはじめたところだった。大統領の失脚という異例の事態が、こうした流れを妨げないことを期待する。

朴槿恵氏は、第二次大戦後のわだかまりを超えて日韓基本条約を結ぶと同時に「漢江の奇跡」と呼ばれる韓国の高度成長を実現した故・朴正煕大統領の娘。同国の女性として初めて大統領に就任したが、日本の政財界の期待に反して早い段階から対日強硬姿勢をとった。このため日韓の首脳間の定期交流はストップした。

国交正常化50周年である昨年、安倍晋三首相が慰安婦問題で譲歩する形でようやく両国関係が動きだした。12月に日中韓の3カ国首脳会議が日本で開かれるのに合わせて、初来日が見込まれていた。

韓国の大統領は在任中は刑事訴追を受けない。ただ歴代大統領は退任後、親族の蓄財などの不正を告発されるケースが多かった。朴氏の場合、父の朴正煕氏時代から家族ぐるみの関係であった崔被告による国政介入を許しただけでなく、同国の大手企業からの金銭的な支援を求めたことが世論の反発を招いた。

朴氏が退任し、大統領選挙の時期が早まった場合、国連事務総長を間もなく退任する潘基文氏はじめ後継候補の動向に注目が集まる。野党の党首らの中には朴氏以上の対日強硬派が多く、慰安婦合意の白紙撤回を公言する向きもある。

日韓の関係悪化は、日本企業の韓国での経済活動に影響する。特に韓国では、日韓条約で「解決済み」とされている戦時中の勤労動員について再度、日本企業に賠償を求める訴訟がいくつもある。朴氏の退陣が、両国の経済関係に冷や水を浴びせる結果を恐れる。

(2016/11/30 05:00)

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