[ オピニオン ]
(2016/10/31 05:00)
米アップルが10月27日(日本時間28日)、ノートパソコンの最上位機種「MacBook Pro」の新型を発表しました。メジャーアップグレードは2012年以来で、待ちに待った新製品。その新機能の中でも、ひときわ目を引くのが「タッチバー」でしょう。
これはキーボードの最上列を占めていたファンクションキーの代わりに配置した帯状の有機ELディスプレーで、その時々の作業状況に関連したアプリケーションやツールなどを表示し、指でタッチすることでユーザーの操作をしやすくするというものです。
個人的には、今回発表の新機種への買い替えを検討しているのですが、問題はその値段。タッチバー搭載モデルは13インチで17万8000円からとなっていて、同時発売のタッチバー非搭載モデルより3万円も高い。さらに15インチは23万8800円から(いずれも税抜き価格)と、強気の価格設定です。アップル相手では量販店での値引きも期待できませんし、悩ましいところです。
と思っていたら、アップルは英国でそれ以上に強気に出ていました。新型MacBook Proを発表したその日に、英国内で販売しているパソコンの一斉値上げに踏み切ったのです。
英国は6月の国民投票で欧州連合(EU)から離脱する、いわゆる「ブレグジット」を決めて以降、為替相場で通貨ポンドの下落が続いています。それを受け、13インチの2015年モデルのMacBook Airは以前の849ポンド(約10万9000円)から949ポンド(約12万2000円)に、デスクトップ型のMacProは2499ポンド(約32万円)から2999ポンド(約38万4000円)にそれぞれ値上げされました(いずれも税込み価格)。米国での価格は変えずに、英国での値上げの幅は最大20%にも上っています。
ただ、最近のドル・ポンドの為替レートと英国での20%の付加価値税を加味すれば、米国とほぼ同じ価格水準ではないか、との見方もあります。さらに、ポンド安を受けて価格改定に踏み切るIT企業はアップルだけではなく、マイクロソフトも企業向けのクラウドサービスやソフトウエアなどについて値上げを表明しています。
Macの値上げを巡っては、こんな笑えない話もあります。カナダではMacProが3499カナダドル(約27万3000円)で売られていて、英国で買うより800ポンドも安い。そこで、フィナンシャル・タイムズ紙(FT)によれば、「ロンドンートロント間往復349ポンドの格安航空券を使ってカナダに行けば、MacProを買っても十分お釣りがくる」というのです。
このコラムの第1回で「英国の離脱が別の離脱を生む」と書きましたが、もしかするとFTの記事のように、安い品を求めて国外に買い物に行く離脱組が出てくる、あるいはすでに出ているのかもしれません。ブレグジットの副作用が英国の消費者をじわり直撃し始めているようです。(デジタル編集部長・藤元 正)
(2016/10/31 05:00)