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[ 化学・金属・繊維 ]
(2017/1/9 05:00)
輸送機器の“軽量化ニーズ”を狙い、アルミニウム圧延メーカーが設備投資を活発化している。有望市場の米国や中国ではアルミメジャーに加え、日系アルミ各社も大口需要先の自動車メーカーに触手を伸ばす。神戸製鋼所のアルミ事業を統括する金子明副社長に戦略や課題を聞いた。
―自動車業界を中心に軽量なアルミへの関心が高まっています。
「米国を中心に自動車の燃費規制が強まり、車体の軽量化は自動車メーカーの重要課題の一つになっている。当社も1980年頃にアルミ板事業を始めたが、ここ1、2年はこれまでにない手応えを感じる。今後、数年間はアルミの“次のステージ”に向け、設備投資など重要な経営判断が増えるだろう」
―アルミ事業の重要拠点、天津工場が16年1月に稼働しました。
「中国の自動車用アルミ板材の生産拠点で、必ず成功させなければならない。日系メーカーに加え、当社が販路を築いてきた欧州メーカーにも供給する。引き合いは強く、材料認証の取得を進めている。フル操業時で年産10万トンだが、その水準に乗るのは20年以降になりそうだ」
―天津工場で使う母材の確保が課題です。
「当初は天津工場が必要な母材(冷間圧延材)の全量を真岡製造所(栃木県真岡市)が供給する計画だった。ただ、飲料缶や自動車向けを中心に国内需要が堅調で、天津工場に振り向ける量は減らさざるを得ない。真岡製造所の圧延能力も段階的に増強しているが、追いつかない状況だ」
―グループ外からの母材調達も必要では。
「品質や安定調達の観点からも自社でまかなうのが理想だが、外部調達も検討する段階にきている。調達先は中国国内をはじめ、台湾や東南アジアにも広げる。1000億円の戦略投資枠の中で、供給力がある企業の買収も検討する」
―米国にアルミ板工場を新設する計画が中断したままです。
「もちろん建設の機会を狙っている。ただ、この工場も原料の母材が必要で、現状では早期に調達先を確保するのは困難だ。20年頃の設立を見込んでいたが1、2年程度の遅れは許容範囲と考える」
【記者の目/母材調達、手腕試される】
神鋼のアルミ事業の最大課題は、天津工場の母材調達だ。真岡製造所から全量の調達が困難となった今、グループ外で調達先の確保が欠かせない。ただ、輸送機器や飲料缶用途を中心にアルミ需要は世界的に伸び、加工前の母材は“取り合い”の様相が色濃い。自動車メーカーが求める高品質な母材を外部から安定的に調達できるか。トップの手腕が試される。
(小野里裕一)
(2017/1/9 05:00)