[ ロボット ]
(2017/1/13 05:00)
【福島】国際競争の遅れを挽回―。自律制御による飛行ロボット(ドローン)配送として世界最長距離となる約12キロメートルの飛行試験が福島県南相馬市で12日、成功した。離島への配送や、被災地への緊急物資の供給などへ応用が期待される。
試験ではドローンにスープの容器を持たせ、海岸にいるサーファーに届けた(写真)。英国、ドイツなどドローン配送実証の先進地域でも最長は5キロメートル程度だという。今回は距離を2倍以上に伸ばし、日本のドローン戦略の巻き返しへ大きく前進した。
ドローンメーカーの自律制御システム研究所(千葉市美浜区)が試験を実施。野波健蔵社長は「小さな一歩だが、世界を大きく変える可能性がある」と期待を述べた。ウェザーニューズがドローンの位置確認システムを提供。楽天とNECも協力した。
【申請手続き簡素化-目視内飛行ルールに課題】
12日、福島県南相馬市の海岸沿いで約12キロメートルにわたる飛行ロボット(ドローン)による配送の試験が成功した。米アマゾンが英国などでドローン配送の実証を進める中、日本では厳格な規制や手続きなどがあだとなって実証が遅れてきただけに、今後の同市での飛行試験への期待は大きい。ただ、未解決の課題も浮き彫りにした。(平岡乾)
海岸線特有の強い北風を、自律制御システム研究所(千葉市美浜区)のドローンが力強く切り裂いて進み、現地のサーファーに温かいスープを届けた。野波健蔵社長は、「夏ごろには往復20キロメートル以上飛ばしたり、ドローンを隊列飛行させたりしたい」と計画を明かした。
同社は千葉市の特区を活用し、東京湾などで試験飛行を重ねてきた。とはいえ、人口が多く、建物が密集する場所があるため、利用制限も多く苦労も絶えなかった。一方、南相馬市の沿岸部は行き交う船なども少なく、「その日の午後にドローンを飛ばしたいと申請しても問題ない」(野波社長)くらい、手続きが簡素だ。
また南相馬市では、経済産業省が2017年度中に大規模実証試験場「ロボットテストフィールド」の一画にドローン航空管制システムを構築する計画もある。同じ空域を多数のドローンが飛んでも衝突を回避できるようにするシステムの確立を目指す。今回の沿岸部での飛行試験には、これに先駆けて基礎的な飛行データを積み上げる狙いもある。
同社と提携する楽天は、ドローン配送に強い関心を示す。長距離飛行の成功を受け、ドローン事業を担当する向井秀明氏は、「ラストワンマイルと呼ばれる短距離だけでなく、中距離配送にもドローンを応用できそうだ」と期待を寄せる。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)も今回の試験に協力。「ドローンに求められる性能や、性能を試験する方法を確立していく」(宮本和彦ロボット・AI部主査)とし、国際標準化活動にも生かす方針だ。
課題も浮き彫りになった。今回のドローンの飛行速度は時速43キロメートル。実は自律制御システム研究所のドローンは同70キロメートル超で飛べる。にもかかわらず、人間の目視内飛行を求める規制があるため、監視者を乗せて並走する船の速度がボトルネックとなった。野波社長は、「こんなルールはおかしい。政府には今すぐにでも柔軟な対応をお願いしたい」と訴えた。
(2017/1/13 05:00)