[ 政治・経済 ]
(2017/1/31 11:00)
(ブルームバーグ)イスラム圏7カ国の市民の入国を制限する米大統領令による波紋はさらに広がり、30日にはオバマ前大統領が全米各地で起きている抗議活動への支持を表明するという異例の行動に出た。しかし トランプ大統領は大統領令の正当性を主張している。
大統領職を退いた者は、特に新政権発足から日が浅いうちは政策をめぐる議論に加わらないというのが最近の通例だった。オバマ氏のスポークスマンが発表した声明はトランプ氏への直接の批判こそ避けたものの、その意味合いは明確だった。
オバマ前大統領のスポークスマン、ケビン・ルイス氏が30日午後、電子メールで記者団に送付した声明は、オバマ氏は「市民らの関与の度合いに勇気付けられている。市民は憲法が保障する集会・団結権と、選出議員に自分たちの声を伝える権利を行使しており、これは米国の価値が脅かされている時にわれわれが期待する行動そのものだ」とし、オバマ氏は「信仰や宗教を理由にした差別に根本的に賛同できない」と表明した。
批判に反論
トランプ大統領は30日、週末に全米の空港で起きた混乱について、抗議デモやデルタ航空のシステム障害によるものだと主張し、入国を制限した自身の大統領令が原因ではないとの立場を示唆した。ただデルタ航空の障害が生じたのは大統領令の48時間余り後で、続いたのはわずか3時間だった。
トランプ大統領は一連のツイッター投稿で、海外からの渡航者「32万5000人のうち、事情聴取のためとどめ置かれたのはわずか109人だ。空港で大きな問題を引き起こしたのはデルタ航空のコンピューター障害」と「抗議デモの参加者」だと指摘した。デルタ航空の広報担当者からはこれまでのところコメントは得られていない。
トランプ政権は引き続き入国制限をめぐる混乱への対処に追われ、29日には合法的なグリーンカード(永住権)保有者の米国への入国が阻止されることはないと説明、米当局のために働いたイラク人への影響緩和に動いた。多くの米主要企業の経営者は事業混乱に警告を発している。
米国防総省は米軍の翻訳者やパートナーのイラク人が入国制限の影響を受けないよう、リスト作成に着手した。同省のジェフ・デービス報道官が記者団に明らかにした。
広がる反発
大統領令による入国制限にアップルのクック最高経営責任者(CEO)やフェイスブックのザッカーバーグCEOといったハイテク業界首脳が真っ先に反発した後、金融から自動車に至るさまざまな業界の経営者が声を挙げ始めた。
ゼネラル・エレクトリック(GE)のイメルトCEOは社内電子メールで、同社には「名指しされた国の従業員が多く在籍しており」、「社の成功には」これらの従業員が「不可欠であり、彼らはわれわれの友でありパートナーだ」と言明。GEは「今後も自分たちの声が新政権に届くように努める」と表明した。
ゴールドマンのロイド・ブランクファインCEOは29日の社員へのボイスメールで、トランプ氏の政策は「当社に支障を来す」恐れがあり、「われわれが支持する政策ではない」と表明。マスターカードのバンガCEOは自分も移民だとした上で、大統領令は「米社会に亀裂を生む」と指摘した。フォード・モーターのフォード会長とフィールズCEOは共同声明で、同大統領令を支持しないと述べた。
原題: Trump Defends Immigration Order as Obama Backs Demonstrations(抜粋)
(2017/1/31 11:00)