[ エレクトロニクス ]

東芝、当期赤字3900億円に−債務超過回避へ 半導体の完全売却も

(2017/2/15 05:00)

  • 会見する綱川社長

  • 綱川社長(右)と佐藤良二監査委員会委員長

東芝の業績が急速に悪化している。14日、米原子力発電事業の巨額損失の影響で、2017年3月期(米国会計基準)の当期損益が3900億円の赤字になる見通しだと発表した。従来の黒字予想から一転し、赤字となる。通期の債務超過が避けられない状況だ。資本増強のため3月末に分社する半導体メモリー事業は、外部からの出資比率をこれまで示していた20%未満から、50%以上に引き上げる検討も始める。

同日会見した綱川智社長はメモリー新会社について「東芝がマジョリティーであることにはこだわらない」と発言。出資企業の持ち株比率を中長期的に引き上げることも選択肢に含める。また原発建設からの撤退など海外の原発事業を縮小し、コスト削減を図る。

16年4―12月期連結業績の見通しは営業損益が5447億円の赤字、当期損益は4999億円の赤字、売上高は3兆8735億円。米原発事業の減損額は、営業損益ベースで7125億円を計上する方針だ。

16年12月末時点で債務超過に陥っており、資本対策がなければ3月末時点の株主資本は1500億円の赤字となる見通しだ。志賀重範会長は米原発事業の経営責任を取り、15日付で取締役と代表執行役を辞任する。

東芝の経営は短期間で急速に悪化しており、今後も予断を許さない状況だ。同社は、同日予定していた16年4―12月期連結決算発表を延期した。原発事業の米子会社ウエスチングハウス(WH)が実施した企業買収を巡り、内部統制不備の疑いなどが発覚したため。

この事案は決算に影響を与える恐れがあるとし、3月14日を期限に調査し、正式な決算を発表する。調査結果次第では、さらに踏み込んだ対応策が迫られる。

メモリー売却/原発海外縮小-2枚看板下ろす

東芝が半導体メモリー事業と原子力発電事業の2枚看板を下ろす決断をした。2016年4―12月期に原子力発電事業で7125億円の損失を計上する見通しとなったことが引き金を引いた。資本増強のため半導体メモリー事業は完全売却を含めて手放す方針を打ち出し、原発事業では海外展開を大幅に縮小する。東芝は何の会社になるのか。将来像はみえない。

東芝は半導体メモリー事業を分社し、外部から出資を受け入れる方針を1月27日に示した。その際、受け入れ比率は20%未満に抑えると説明していた。それが14日には過半以上の売却も検討する方向に転換。同日の会見で、完全売却の可能性を問われた綱川智社長は「あらゆる可能性を否定しない」と答えた。

20%未満では出資元企業のうま味が少ないことから、特に金融機関からは受け入れ比率引き上げを求める声が高まっていた。東芝は十分な資金を調達し、3月末の債務超過を回避するため引き上げを決断したとみられる。

一方、今回の損失発生源である原発事業。米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)が15年12月に買収した原発建設・サービス企業「米CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)」の資産価値を見直した結果、損失が膨らんだ。米国の4機合計のコスト見積もりで61億ドル(約6920億円)の増加が主な要因だ。

対応策として海外のプラント新設事業では土木建設から撤退し、機器供給やエンジニアリングなどに特化する方針を示した。また現在、東芝はWHの株式の87%を保有するが、「パートナーを探し、東芝の持ち分を50%以下に減らすことも考える」と綱川社長は説明した。

東芝は不適切会計問題を契機としたリストラを経てエネルギー、社会インフラ、半導体を中核3部門とし、中でも半導体メモリーと原発を成長エンジンに据えた。綱川社長は「基本路線は変わらない」と説明したが、2本柱を失えば屋台骨が揺らぐ。今後の看板事業はみえず、経営再建に暗雲が立ち込める。

志賀重範会長が引責辞任/綱川智社長は報酬9割返上

東芝は14日、米原発事業で7000億円超の損失が発生することを受け、原発事業トップの志賀重範会長が15日付で引責辞任すると発表した。志賀氏は6月まで執行役にとどまり、米原発問題の解決に専念する。

綱川智社長は2月から月額基本報酬の削減幅を9割(従来6割)に引き上げ、経営責任を明確化する。原発事業担当の畠沢守・執行役常務は6割(従来3割)に削減幅を拡大。副社長は5割、その他の執行役は4割にそれぞれ1割引き上げた。

原発担当の社内カンパニーのダニー・ロデリック社長も退く。

志賀氏は、巨額損失発生の舞台となった米原発子会社ウエスチングハウスの会長を務めたこともある。

金融機関向けきょう説明会、支援継続を要請

東芝は15日午前、取引金融機関向け説明会を開き、経営再建に向けた支援を改めて要請する。主力取引銀行の三井住友銀行、みずほ銀行、三井住友信託銀行を中心に大半の金融機関が要請に応じ、3月以降も融資を当面継続する方針を確認する見通しだ。

三井住友信託の橋本勝次期社長は14日の記者会見で「東芝から相談があった場合は真摯(しんし)に検討していきたい」と語った。ただ、東芝は原発事業の損失が7000億円を超え、昨年12月末時点で株主資本がマイナスとなり、負債が資産を上回る債務超過に陥った。地方銀行など銀行団の一部では、東芝の経営に対する不安が一段と高まっている。

15日の説明会では、一段の資本増強やコスト削減などを求められる可能性もある。

(2017/2/15 05:00)

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