[ 機械 ]
(2017/2/16 05:00)
【NC旋盤 L20 LFV仕様】
シチズンマシナリーの新型自動旋盤は常識にとらわれない柔軟な発想から生まれた機械だ。高い精度が求められる工作機械は、その妨げとなる振動を徹底排除する設計が基本。ところが新型機は振動をあえて起こし、有効活用しようというものだ。ワーク(加工対象物)のキズを防止し、連続運転による高生産性をかなえる。加工品質が高いため、全数検査の手間を省ける利点もある。近い将来、旋盤の標準になりそうな技術だ。
切りくず対策。自動旋盤ユーザーの最大の悩みの一つだ。旋盤は回転するワークに工具を当て、皮をむくように狙った形に仕上げる工作機械。削って生じた線形の切りくずが絡まり、ワークのキズや工具寿命の低下を引き起こす。従来、工具や切削油、加工条件の工夫といったユーザーのノウハウで対応してきた。これを新型機では「普通の数値制御(NC)プログラムで解消する」(開発本部の三宮一彦担当課長)と、職人技に頼らなくても悩みを解決できるようにした。
NCプログラムで、旋盤の主軸と、工具刃物台に備えたサーボ軸を、主軸回転と同期させながら振動、切削する。工具とワークが接触しない“空振り”の瞬間を設け、切りくずを細かく分断。絡まりにくくした。切りくずが絡まず、かつ10分の1程度に減容できるため、長時間の連続無人運転ができるようになる。スマートファクトリー化には欠かせない機械となった。
そもそも振動を活用する技術は「1960年代にはあった」と開発本部の中谷尊一副部長は言う。ただ、特別なカム機構を備えた、いわば専用機。その後も研究は進んだが、新型機では可能な、先細りの形であるテーパーや円弧、穴あけなどの加工には対応しきれておらず、普及しなかった。
開発陣は手探りで最適な条件を探り、また「一度始めたら、1―2カ月待つしかない」(開発本部の鈴木敏之氏)という泥くさい耐久評価を繰り返し、完成させた。振動切削は「眠っていた技術」(中谷副部長)。同社の手で、ようやく日の目を浴びた。
(六笠友和)
【製品プロフィル】
シチズンマシナリーの自動旋盤「Lシリーズ」のうち、最量販の「L20」がベースマシン。独自開発した低周波振動切削(LFV)技術で加工時に工具などを振動させ、切りくずを細かく分断する。
これにより切りくずがワークや工具に絡みにくく、ワークのキズ防止、工具の高寿命化、連続無人運転などに向く。
(2017/2/16 05:00)