[ ICT ]
(2017/4/7 05:00)
IoTを生かすも殺すもアイデア次第、さてあなたの発想は?
この連載では、IT分野で今もっともホットな話題となっているIoT(Internet of Things=モノのインターネット)およびAI(人工知能)をテーマに、その最前線の動きを、筆者なりの視点を交えながら解説したい。
国内IoT市場は2021年に11兆円規模へ
まずは読者の皆さんに質問を。
「世界中で使われている○○の中身をすべて把握できたとしたら、世の中は本当に変わる」
上記の○○に入る言葉を考えてみていただきたい。簡単そうで意外に難しいのでは?
この話は、かつてガートナージャパンのIoTをテーマにしたセミナーで聞いたものである。回答例は後ほど紹介するとして、連載初回は「IoTのインパクト」について取り上げてみたい。
IoTとは「モノのインターネット」を示す略語で、設備や機器などあらゆるモノがインターネットに接続されて活用される状態や仕組みのことである。加えて最近では、モノだけでなく、その内部や周辺で起きている「コト」も含めた形で解釈されるケースもある。
IoTを「つながる」という視点でとらえたコンピューティングの進化でいえば、「第3の波」に相当すると言われている。「第1の波」がメインフレームに数千の端末がつながるようになった1970~80年代、「第2の波」がサーバに数百万のPCがつながるようになった1990~2000年代とするならば、これからはインターネットに500億個のモノがつながる「第3の波」が到来するとの見立てだ。
IDC Japanが先頃発表した国内IoT市場動向の調査結果によると、2016年の市場規模は5兆270億円の見込み。そして2016年から2021年まで年間平均成長率17.0%で拡大し、2021年には11兆237億円に達すると予測している。(図参照)
さらに用途別で見ると、農業フィールド監視、小売店舗内個別リコメンデーション、院内クリニカルケア、スマートグリッド、テレマティクス保険、ホームオートメーション、スマートアプライアンスといった分野では、2016年から2021年の年間平均成長率が25%を超える高い成長が見込まれるとしている。
IoT活用がデジタルトランスフォーメーションのカギに
IDC Japanではこの調査結果を受けて、「クラウド、モバイル、ビッグデータ、ソーシャルなどの最新技術を駆使することで、企業がIoTをベースとしたサービス提供者へ自らを変革すること、すなわち“デジタルトランスフォーメーション”が可能になってきている。企業がIoT分野におけるデジタルトランスフォーメーションを通じてエンドユーザーに価値あるサービスを提供するうえで、ITベンダーは企業からの要望に受け身で対処するだけでなく、自ら率先してビジネスモデルを提案することが求められる」との見解を示している。
つまりは、ユーザー企業もITベンダーも、IoTを生かした新しいアイデアが勝負どころとなるのである。
それを踏まえたうえで……さて、冒頭の質問の○○に入る言葉は思いついただろうか。回答例を1つ。「冷蔵庫」を入れると、世界的に深刻な食糧問題の打開策につながらないだろうか。ほかにも回答はいくつもありそうだ。ヒントは、変えたい分野から考えると発想が浮かぶかもしれない。
実は、この考え方こそがIoTを生かしたビジネスモデルにも強く求められるのではないだろうか。
(隔週金曜日に掲載)
【著者プロフィール】
(2017/4/7 05:00)