[ 政治・経済 ]
(2017/5/6 19:30)
横浜市で開催中のアジア開発銀行(ADB)の年次総会は6日、各国閣僚らによる討議に入った。50回目の節目となる会合では、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)とADBの関係に注目が集まった。膨大なインフラ需要という「量」に応えるため、ADBはAIIBとの協調を模索する一方、環境面や経済性などインフラの「質」で差別化を図る構え。アジアの開発支援をめぐる競争は新たな局面を迎えている。
ADBの試算によると、2030年までのアジアのインフラ需要は総額26兆ドル(約2900兆円)。毎年1.7兆ドル(約190兆円)の投資を続ける必要があり、ADBの財源では到底賄いきれない規模だ。
ADBとAIIBはこれまで3件の協調融資を行ったが、本格的な連携には至っていない。中国の肖捷財政相は6日の総会で、同国が進める巨大プロジェクトであるシルクロード経済圏構想「一帯一路」への協力をADBに要請した。膨大なインフラ需要に対応するには、民間資金の活用とともに双方の協調が課題となる。
ADBは1966年の発足以来、アジア諸国の経済成長を金融面から支えてきた。インフラ支援に加え、高齢化問題や感染症対策といった保健分野などの新たな課題に取り組む。各国への政策助言にも力を入れており、中尾武彦総裁はこうした幅広い機能を訴え、AIIBとの違いを強調する。
麻生太郎財務相は6日の総会で、インフラ事業への高度な環境技術などの活用を支援するADBの新たな基金に資金拠出すると表明。質の高いインフラを重視するADBと「連携を一段と強化する」と語った。
開発支援の現場では「ADBとAIIBが連携できる案件は多い」(国際協力銀行幹部)との声が上がる。アジアの持続的な発展のため、AIIBとの協調と競争のバランスをどう取るのか。ADBは次の50年を見据えた戦略を問われている。(時事)
(2017/5/6 19:30)