[ 政治・経済 ]
(2017/5/8 10:00)
【パリ時事】今後の欧州連合(EU)の行方を占うフランス大統領選は7日、決選投票が行われ、中道系独立候補のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン候補(48)を破り、当選した。内務省の開票結果(開票率93%)によると、得票率はマクロン氏が65%、ルペン氏が35%。
EU離脱を主張したルペン氏の敗北で、歴代政権が続けてきた「親EU」路線は維持されることになった。マクロン氏は1848年の第2共和政発足時に40歳で大統領に就任したナポレオン3世の記録を塗り替え、仏史上最年少の大統領となる。
マクロン氏は演説で「すべての国民の声に耳を傾けることが私の責務だ」と勝利宣言。ルペン氏はマクロン氏について「重大な試練を前に成功することを願う」と述べ、敗北を認めた。
選挙戦では高止まりする失業率や相次ぐテロを受け、EU・ユーロ圏をめぐる路線や移民・難民の受け入れの是非が焦点となった。既存政党への不満が高まる中、4月23日の第1回投票では左派与党・社会党と右派野党・共和党の候補がそろって落選。2大政党不在の状態で決選投票が争われる異例の事態となった。
マクロン氏は現行路線を維持しつつ、労働分野の規制緩和をはじめとする大胆な構造改革を推進すると主張。ルペン氏は、EU離脱や自国通貨の復活を通じて財政や通貨政策の主導権を取り戻すとともに、移民の流入を制限して治安を改善すると訴えたが、及ばなかった。
投票率は75%前後となる見通しで、第1回投票の77・8%を下回り、1969年大統領選以来の低水準となる公算が大きい。両候補のいずれにも共感できず、棄権した有権者がいたとみられる。
マクロン氏は、オランド現大統領の任期が切れる今月14日までに新大統領に就任。15日から組閣に着手する。任期は5年。政権の要となる首相には、女性の起用も視野に入れる考えを示している。
マクロン氏に祝意―トランプ米大統領
【ワシントン時事】トランプ米大統領はツイッターに「マクロン氏の大勝利をお祝いする。彼と仕事をするのがとても楽しみだ」と投稿した。
ホワイトハウスも声明で、マクロン氏に祝意を示すとともに、「仏政府との緊密な協力が続くことを期待している」と表明した。
トランプ氏は4月にパリ中心部で起きた銃撃事件後、米メディアとのインタビューで、ルペン氏を「国境(管理)では彼女が最も強い」と評価。ルペン氏を事実上支持していると受け止められた。
EU結束支持姿勢を評価―メルケル独首相
【ベルリン時事】ドイツのメルケル首相はマクロン前経済相に電話で祝意を伝え、「結束し、世界に開かれた欧州連合(EU)」を支持するマクロン氏の姿勢をたたえた。
メルケル首相はまた「伝統的に緊密な独仏友好の精神で、新大統領と協力していくことを楽しみにしている」と表明した。ガブリエル外相もツイッターで「(フランスは)欧州の中心にとどまり続ける」と述べ、マクロン氏の勝利を歓迎した。
仏は「偽ニュース」に勝利―トゥスクEU大統領
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)のトゥスク大統領は、フランス国民が「偽ニュースの圧政に対し、自由、平等、友愛を選択した」とフランス革命以来の理念に触れて祝意を示した。
また、ユンケル欧州委員長はマクロン氏に書簡を送り、「力強く進歩的な欧州を守った」と歓迎。ユンケル氏はツイッターでも「フランスが欧州の将来を選んだことをうれしく思う」と記した。
モゲリーニEU外交安全保障上級代表(外相)は「マクロン氏と連携し、EUを立て直す準備ができている」とツイートした。
(2017/5/8 10:00)