[ 機械 ]
(2017/6/26 13:30)
当社は、1967年に創業し“お客様のモノづくりを支える省力設備の製造を通じ、関わるすべての人々の「豊かな和」を育みながら、自然と共存する人類の発展に貢献する”を理念に掲げ、HPC(Hard Plate Changer)式ダイホルダをはじめとした各種鍛造用設備の開発、製造を行っている。
1981年に日本で初めて開発した油圧シリンダー内蔵のHPC式ダイホルダは、鍛造プレスにおける金型交換時間の短縮、省力化、省人化、省スペース化、安全性を飛躍的に向上させたシステムであり、現在では国内外で100ライン以上設置している。また HPCダイホルダの開発などの功績を評価され、2010年には愛知県の優れたモノづくり企業として「愛知ブランド企業」の認定を受けた。また、当社はさまざまな加工機械を保有しており、設計・開発から加工、組立てまで大半を社内にて行っている。
社名の由来である「楠(クスノキ)」は、名古屋市の村上社にある長命で、30mを超える大樹である(図1)。このクスノキのように成長すべく、今後も実績、顧客の評価を踏まえ、改造・改良を加えながら鍛造業界の「コンシェルジュ」としてダイホルダのみならず、さまざまな要望に応えていくことで、顧客により多くの感動と満足とメリットを創造し、提供し続けることを目指している。
【楠精工(株) 近藤 裕基】
→特集 金型製造・部品成形における最新の合理化技術/HPC システムを用いた金型交換の効率化(上)
鍛造用ダイホルダおよびHPCシステムの概要、特徴
当社は顧客のニーズに合わせたダイホルダを提案している。そのため、当社にはさまざまな種類のダイホルダが存在している。
例えば、ダイホルダには上下の金型の同芯度を維持する要である「ガイドポスト」と呼ばれる部品がある。一般的には円柱状の丸型ガイドポストが主流であるが、スラスト荷重や、より同芯精度の高い角型ガイドポスト、熱膨張による変形やひずみの影響を受けにくいX型ガイドポストなどさまざまな種類がある。
図4の角型ガイドポストダイホルダは、ガイドポスト4面の摺動面が取外し可能なプレート方式となっており、容易に交換が可能である。このため、摺動面が摩耗した場合などに、プレス機からダイホルダを搬出することなくプレート交換により復元対応が可能である。また、ガイドポスト本体とプレートの間にシムを挿入することにより、ダイホルダ上下の同芯度を細かく調整することが可能である。
当社のダイホルダの最大の特徴は、ダイホルダの金型の乗っている部分(ハードプレート)を着脱可能としている点である。着脱可能な部分を「カセット」と呼んでいるが、そこをカートリッジ式にしている。こうすることで金型の交換が、より早く、楽に、正確に、そして、安全に行えるようになっている。
また金型(カセット)を固定するために油圧式クランプ(図5)を採用しており、これも特徴の一つである。油圧式クランプはカセット式を開発したとき、同時に採用した。以前は人の力で金型をボルトで締め付けていたのに替えて、ボタン操作一つでしっかりと金型を固定できる。油圧ユニットに圧力センサを設けることにより、クランプの閉め忘れや不意な緩みを早期に発見することができ、安全性の向上を図ることができる。
当社の HPC ダイホルダで構成するのが、図6の「HPC システム」である。基本的にはダイホルダ、カセット、カセット交換台車によって構成される。顧客の要望に応じ、台車用ターンテーブルやカセットを保管するためのカセット待機台などの設備を追加する。
HPC システム導入により得られる効果
HPC システムによりダイホルダはプレス機に内蔵されたまま、カセットのみ交換を行うことができる。さらにダイホルダ内に、油圧によりカセットを固定させる機構を設けたので、作業者はプレス内で金型をボルトにより着脱させるという、危険で汚い重労働を行う必要がなくなり、ボタン操作により安全で楽に金型を固定させることができるようになった。
また、カセットは従来のダイホルダに比べて軽くて小さいので、ダイホルダ交換装置のような大がかりな装置を必要とせず、小型のカセット交換台車(図7)により楽に出し入れをすることができる。カセット交換台車は、上部にカセット搭載スペースとモータで駆動する搬出入用のフックを備える。これにより、カセットに直接触れることなく、搬出入を行うことが可能となる。カセット上型の反転も、ダイホルダ上型に比べて簡単にできるので、危険な作業を行わなくてよい。また、それに伴い上型を反転する装置や金型を交換するための装置を小型化することが可能となる。
まとめると、HPC システムの導入により、
① プレス内での危険で汚い重労働をする必要がなくなる。
② カセット交換台車は小型で設置スペースが小さくて済む。
③ 金型交換時間を大幅に短縮させることができ、プレスの稼働率が高まる。
④ カセットの保管もダイホルダのような広い場所を確保する必要がない。
これらの長所を同時に成立させることができるのである。
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今後、鍛造業界では「最小限の材料を最小限の加工工程にて最良の製品に加工する」という製品の高精度化、コスト低減がより求められると考える。そのため、近年、鍛造加工で完成形状に近づけ、仕上げ加工を必要としないネットシェイプ加工への需要が高まっている。
ネットシェイプ加工ではバリの発生を最小限に抑えるため、最小限の材料で加工を行うことができ、バリ除去のための工程を必要としない。またバリをなくすことにより、トランスファーなどの搬送用ロボットへの対応が可能となる。当社では、それらの要望に応えるべく、ネットシェイプ加工に対応した冷間鍛造用閉塞ダイホルダの開発を進めている(図 8)。
冷間鍛造は熱間鍛造に比べ要求される製品精度が高い。そのため、金型を含めた総合的な設計が必要であり、今後の課題である。また、従来製品も今まで以上に段取り替え作業の効率化、時間短縮を図るべく、高品質化、改良を進めている。
(2017/6/26 13:30)